▽ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
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中米ハイチの首都ポルトープランスに拠点を置く人権団体は9日、米国がハイチの主要ギャングを「外国テロ組織」に指定したことで、多くの市民が窮地に追い込まれる可能性があると警告した。
NGO人権擁護全国ネットワークの代表はSNSに声明を投稿。「我々は以前からギャングをテロリストと見なしてきたが、トランプ米政権のテロ指定は避難民を含む最も弱い立場の市民を追い詰める可能性が高い」と述べた。
米国務省は先週、ハイチで猛威を振るう2つのギャングを「外国テロ組織」と「国際テロリスト」に指定した。
対象となったのはポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と中部アルティボニット県に拠点を置く「グラン・グリフ」。
米財務省もグラン・グリフを制裁リストに追加。ヴィヴ・アンサムはすでにリスト入りしていた。
人権擁護全国ネットワークは2つのギャングを非難。「彼らは民家に火をつけ、女性をレイプし続け、誘拐、拷問、超法規的殺人を繰り返している」と述べた。
国際組織犯罪に対抗するグローバル・イニシアティブ(GITOC)は米国のテロ指定を含む取り締まりで、ギャングの資金調達を麻痺させることができる一方、「ギャングと取り引きせざるを得ない市民の生活が破綻し、避難民が増え、仕事や収入を失った人がギャングに加入する恐れもある」と指摘している。
ハイチ中央銀行は今週、金融業者、両替局、決済サービス会社に対し、ヴィヴ・アンサムおよびグラン・グリフとの取り引きを停止するよう警告した。
地元メディアによると、国内で活動する一部のNGOはギャングの許可を得て人道支援を輸送したり、ギャングの支配地域に届けているという。
このテロ指定により、米国だけでなく外国の団体もギャングに近いNGOへの援助を打ち切れば、市民のギャング依存が高まる可能性もある。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。
ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられるギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。
最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ヴィヴ・アンサムと対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。
一連の暴力とギャング間抗争により100万人以上が住居を失い、その多くが避難所に身を寄せている。
国連の推計によると、今年1~3月末のギャング間抗争の死者は確認できているだけで1600人以上。数千人が負傷し、数万人が隣国ドミニカに不法入国したと推定されている。