マスクネ
コロナウイルスが世界中に拡散され、マスクは日常生活を送るうえで欠かすことのできない防護具になった。
2020年以前からマスク着用文化が定着していた地域(アジアなど)の人々は、これによってもたらされる副作用をよく理解していた。しかし、マスクに嫌悪感を示してきた地域(主に欧米)は違った。
マスクによって引き起こされるニキビこと「マスクネ」は、メイクを行う女性の天敵である。
コネチカット州、イェール大学医学部皮膚科准教授のモナ・ゴハラ博士はBBCの取材に対し、「マスクネはマスク着用によってもたらされる皮膚(肌)トラブルのひとつである。私も仕事の関係で定期的にマスクを着用してきた。結果、マスクネは私にとっても身近な肌トラブルのひとつになった」と述べた。
マスクがもたらす不快な肌トラブルは、世界中の女性を苦しめている。
皮膚科医のアンジェリン・ヤン氏によると、マスクと肌が常にこすれ合うと「マイクロティアーズ(micro-tears)」が発生し、接触部に細菌や汚れが入りやすくなることで毛穴がつまり、炎症を引き起こすという。
暑い時期にマスクを着用すると、ムレる。この湿った環境も、肌トラブルを引き起こす要因のひとつと考えられている。
マスク内で呼吸すると、暖かく湿った環境が形成され、汗、皮脂、バクテリアが肌の表面に堆積する。なお、マスクは閉塞性を担保する防護具なので、このような状況が発生することは致し方ない。
結果、マイクロティアーズと肌の表面に堆積した汗、皮脂、バクテリアが男性より柔らかくきめ細かい女性の肌を傷つけるのである。
ヤン博士はマスクネと戦う、極力防止するための方法として、「厚く、閉塞性の高いスキンケアクリームを避ける」ことが重要だと説明し、次のように述べた。
「肌トラブルに悩む患者たちの多くが、閉塞性の高いスキンケアクリームや製品を使用していた。おすすめは軽い水ベースの製品である。また、軽量保湿剤は肌の表面を覆う保護バリアとして機能し、こすれ合うことによって生じる摩擦を低減してくれる」
「軽量保湿剤を吸収しやすくするためには、定期的な毛穴洗浄が欠かせない。肌の状態をしっかりチェックしつつ、優しいタイプのエクスフォリエーターを使用してほしい。なお、使用前に皮膚科などでアドバイスを受けておくとなおよい」
コロナウイルスはマスク需要を激増させ、マスクネに悩む女性が増えた。しかし、多くのスキンケア企業がこれを防止すべく様々な商品を開発、市場へ送り込み、女性の肌トラブル防止に努めている。
韓国の人気スキンケアブランドDr.jartのサイトに、「マスクエッセンシャルズ」というカテゴリが追加された。
これには「フェイシャルバリアマスク」や傷(マスクネ)防止パッチなどの肌防護アイテムが含まれている。
フランス、クリシーに本部を置く世界最大の化粧品会社ロレアルによると、過去数カ月で「ディープクレンジング製品の販売量が大幅に増加した」という。
ロレアルのアジア太平洋地域担当エグゼクティブヴァイスプレジデントを務めるヨチェン・ザウムセイル氏はBBCの取材に対し、「コロナウイルスの発生以降、ラロッシュポゼやセラヴィなどの人気スキンケアブランドが大ブームに乗っている。主に、クレンザーやシートマスクなどの製品需要が高まっているようだ」と述べた。
アジア太平洋地域におけるディープクレンジング製品の販売量増加は、日常生活でのマスク常時着用によってもたらされた脂性肌、ニキビ、マスクネなどの肌トラブルが主要因だと考えられている。
ザウムセイル氏は「スキンケアはこの業界が最も力を入れている部門である。コロナウイルスによって日常が大きく変化し、マスクを着用する機会が激増した。これからも女性の肌に寄り添い、より良い製品を提供しなければならない」と語った。
スキンケア
街がロックダウンされ、テレワークが当たり前になると、外出する機会の減った女性はメイクを控えた。結果、メイクアップ産業は大打撃を受けた。
ヨチェン・ザウムセイル氏は、ロックダウン解除によって企業活動、飲食店、ショップなどが再開し人々が仕事に戻ると、メイクアップ商品の需要は高まると予想している。
ロレアルによると、この現象は既に中国で発生しているという。同国は厳格なロックダウンによってコロナウイルスを封じ込め、経済活動を再開。女性たちはメイクしたうえでマスクを着用し、外出するようになった。
中国国内の女性の34%がロックダウン中(2月)に化粧を行っていたと回答。この数字は7月上旬になると、68%まで上昇した。
一方、マスクで隠せない目元などの製品需要は、一貫して高いままだという。
目元は顔の中で最も目立つ。マスカラ、アイライナーなどはコロナショックの影響下においても、顧客から支持されているようだ。
また先述の通り、肌に優しい軽量製品の需要が高まりつつあり、マスクに写らず、かつ長持ちする口紅なども売り上げを伸ばしているという。
YouTubeでは、最新トレンドやマスクに適した化粧チュートリアル動画が絶大な人気を集めている。
アメリカ人YouTuberのメリナ・バスナイト氏はBBCの取材に対し、「私は眉毛、アイシャドウのメイクに重点を置いている。鼻から下はマスクで覆われてしまうためだ。最近のトレンドは、フサフサした凛々しめの眉毛と非常に大胆かつカラフルなアイメイクである」
「ただし、屋外でマスクを外す場面も考慮しなければならない。鼻から下についても軽く化粧し、目、マスク、見えない口元のバランスをとることが重要だ」と述べた。
テキサス州の病院で働くバスナイト氏は、仕事で毎日マスクを着用しており、マスクネに悩まされたこともあったという。「マスクが必要不可欠な防護部になり、友人たちからおすすめの化粧方法をあれこれ聞かれた。誰もが、マスクに合う化粧をしたいと考えていた」
彼女はMakeupMenareeというYouTubeチャンネルを開設し、マスクと長年付き合ってきた医療関係者の化粧スキルを紹介することにしたのである。
フィリピン人YouTuberのニーナ・カルピオ氏は、マスクが肌にもたらすダメージを自ら体感したという。
カルピオ氏はBBCの取材に対し、「ロックダウン以前と同じメイクでマスクを着用すると、汗や雑菌などが肌を刺激し、毛穴をつまらせた。また、メイクがマスクの内側に写り、汚れた」と述べた。
マスク着用が当たり前になった2020年。画期的なワクチンが開発されない限り、この傾向は続く。
女性たちは暑い夏を美しく乗り切るために。そしてスキンケア業界は、マスク着用時の肌トラブル、マスクネに打ち勝つべく、戦っている。
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