ボルトン黙示録「The Room Where It Happened: A White House Memoir」、2020年6月23日リリース予定

ワシントンD.C.地方裁判所のロイス・ランバース裁判官は、トランプ大統領による元国家安全保障顧問、ジョン・ボルトンの黙示録(回想録)発行中止請求を拒否した。

合衆国司法省は、ボルトン黙示録が適切に吟味されていなかったと主張。これに対しランバース裁判官は、「司法省は、本の差し止め請求が取り返しのつかない害(国家機密の漏洩など)を防ぐことを立証できなかった」と述べた。

またランバース裁判官は、「ボルトン氏は、国家安全保障をトランプ大統領との”賭け”の対象にしている。本に害は含まれていないものの、この裁判自体が国に害を及ぼす結果になった」と付け加えた。

ボルトン黙示録「The Room Where It Happened: A White House Memoir(それが起こった部屋)」は、2020年6月23日(火)にリリースされる予定である。

ボルトン氏は本の中で、「11月の大統領選挙に勝利したい」という願望に意思決定を支配されたトランプ大統領の気まぐれと暴挙を赤裸々に描いている。

2019年12月、出版社は黙示録の一部をホワイトハウスに提出、出版前レビューが開催された。なお、トランプ大統領は本の内容を、「嘘と偽りの物語」と主張している。

合衆国司法省の弁護士は、「ボルトン氏および出版社が原稿の出版前レビューを一切行わず、機密情報が含まれていないことをチェックする義務に違反した」と主張した。

これに対しボルトン氏の弁護士は、「2019年12月に行った出版前レビューを忘れたのか?」と反発。既に述べた通り、ホワイトハウスは黙示録に穴が開き、手垢でベタベタになるほど調べ尽くしている。ボルトン氏の弁護士は、「今回の”言いがかり”はトランプ大統領が本の内容を気に入らなかっただけ」と主張した。

判決内容には、「機密保持契約の義務に違反して機密情報を開示することは、国家の安全を脅かす危険な行為である。しかし、本の内容は事前にチェックされ、機密情報は含まれていないとホワイトハウスも認識していた」と書かれている。

また、「ボルトン氏と出版社は情報当局からの”最終的な承認”を得ていなかった。出版の判断を自分たちで下した結果、国家に取り返しのつかない害を与えたのかもしれない」とも書かれている。

「しかし、ソーシャルメディアとインターネットが発達した現代においては、たった一部のコピーであっても、機密性を軽々と破壊してしまう。黙示録を手にした者は、コーヒーショップの片隅でそれを読み、本の内容を写真に収め投稿すれば、何千万、何億もの人々と情報を共有できる。既に何十万もの原稿コピーが世に出回っている。これを消し去ることはできない」とランバース裁判官は述べた。

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最後の悪あがきは失敗に終わる?

ワシントンD.C.地方裁判所が判決を下した直後、トランプ大統領は「ボルトンは機密情報を大量に公開することで法律を破った。彼は非常に高い代償を支払う。彼は爆弾が大好きだ。爆弾をアメリカに落とし、人々を殺すだろう」とツイートした。

また、「ボルトンは卑怯な手を使って本を世界中に拡散させた。出版前にも関わらず、多くの国民やメディアは本の内容を知っている。尊敬される裁判官もこの愚行を止めることはできなかった」と連投ツイートした。

ボルトン氏の弁護士を務めるチャールズ・クーパー氏は、今回の判決を歓迎。それと同時に、ボルトン氏と出版社が発行前の義務を完璧に遵守していなかった、という判決内容を問題視した。

「裁判官は情報当局から”最終的な承認を得ていなかった”と言ったが、ルールに従い出版前レビューを正しく行っている。この誤った考えも、いずれ正されることになるだろう」とクーパー弁護士は述べた。

ボルトン黙示録を出版するサイモン&シュースター(Simon & Schuster)は、「裁判所が、検疫および事前の公表制限に対する修正第一条の保護、を立証したことに感謝する」とコメントした。

2018年4月、ボルトン氏はトランプ大統領の国家安全保障顧問に就任。イラン、北朝鮮、アフガニスタンなどの主要課題への対処方法について大統領と激しく衝突し、2019年9月に辞任した。

「The Room Where It Happened: A White House Memoir(それが起こった部屋)」の中で、ボルトン氏は大統領を「不規則」「衝動的」「驚くほど何も知らない」指導者として赤裸々に描いている。

黙示録の内容は個人的な会話に基づいている。確認することが不可能な内容は以下の通り。

●トランプ大統領は2020年11月の大統領選挙で勝利を収めるべく、習近平国家主席に助けを求め、「選挙に勝利すれば、中国の農家を助ける。大豆と小麦を大量に購入するだろう」と約束した。

●トランプ大統領は習近平国家主席に、「中国新疆ウイグル地区における強制収容所の建設は正しい。当然である」と述べた。

●トランプ大統領は自分を支援もしくは支持する独裁者を好み、当局の犯罪捜査に介入し圧力をかけ続けた。

●トルコで発生したサウジアラビア総領事館での記者殺害事件において、トランプ大統領は同盟者であるエルドアン大統領を強力にバックアップした。

●トランプ大統領はベネズエラに対する侵略(経済制裁)を「クール」と表現。南米大陸はアメリカ合衆国の一部であると述べた。

●トランプ大統領はイギリスが核保有国であることを知らず、また、フィンランドがロシアの植民地であるか否かを上級補佐官に尋ねた。

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