第二波襲来?

コロナウイルス対策本部の最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は記者団に対し、「収束しかけたパンデミックが悪化していることは確かである。ただし、これは第二波ではない。我々は今も第一波の真っただ中にいる」と述べた。

先週と先々週、アメリカはジョージ・フロイド氏の死がもたらした反人種差別抗議運動に支配された。しかし、国内における感染者が再び増加しつつあり、ヘッドラインは再びコロナウイルスに戻った。

今週、いくつかの州では記録的な新規感染者を確認しており、アメリカでもシンガポール、北京、北海道のような第二波が発生している、という懸念が広がっていた。

第二波発生を警戒する報道に対し対策本部の最高責任者を務めるマイク・ペンス副大統領は、「大衆の不安と恐怖をあおる誇張された情報は発信すべきでない」と報道各社を非難した。

ジョージ・ホプキンス大学の調査によると、19日時点のアメリカの累計感染者数は226万人超、121,000人以上の死亡が確認された。感染者数は世界で最も多く、全体の約4分の1を占めている。

同国の感染状況は3月中旬頃から急速に悪化。4月1週目の24時間当たり感染者数は20,000人を超え、その後も上昇し続けた。4月2週目以降は、1日25,000人~35,000人の間で新規感染者が発生し続けている。しかし、5月に入るとその波がジワジワと引き始める。

連邦政府と各州知事がロックダウンの段階的な緩和を決断し始めたのが5月中旬頃から。なお、この時点における1日当たりの感染者数は17,000人~27,000人ほどを記録している。

各州の感染状況には大きな差がある。まず最大のホットスポットになった北東部エリアの累計感染者数は、国内の約4分の1、死者数は3分の1以上を占める。しかし、ここ数週間の間に、ニューヨーク州やニュージャージー州を含む各州の感染状況は抑制された。

一方、”COVID Tracking Project”がまとめたデータによると、南部と西部では感染者数が急速に増加していることが分かった。

以前、トランプ大統領はウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、「PCR検査体制が拡充され、感染者の早期発見が可能になった」と述べている。

アメリカのPCR検査数は世界の中でも群を抜いて多い。19日時点で約2,500万件を処理しており、それが感染者数の早期発見につながっていることは確かだろう。

しかし、先々週頃から始まった感染者数の再増加は、テスト件数だけが要因とは言えず、それを示唆する証拠もある。

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第一波は終わっていない

アメリカ全土の陽性症例率は低下している。これが高くなるほど新規感染者数は増える。現時点の陽性症例率は5%未満であり、世界保健機関が移動制限緩和(14日間の自己隔離期間あり)を推奨するレベルにある。

しかし、陽性症例率が全国平均の5%を上回っている州は全体の約3分の1にのぼり、それらの地域では当然感染者数も増加傾向にある。

【各州の陽性症例率(陽性者数/PCR検査数)】
・アリゾナ州:17.4%
・アラバマ州:12.3%
・ワシントン州:10.9%
・サウスカロライナ州:10.1%
・ユタ州:9.2%
・テキサス州:9.1%
・ミシガン州:8.7%
・フロリダ州:8.2%
・ジョージア州:7.5%
・ノースカロライナ州:7.2%
・ネブラスカ州:7.0%
・アーカンソー州:6.0%
・アイオワ州:5.9%
・メリーランド州:5.5%
・ルイジアナ州:5.5%
・サウスダコタ州:5.2%

一方、1日当たりの死者数は減少し続けている。北東部では5月初めにピークを迎え、ニューヨーク州だけで1日約1,000人が死亡したが、今週の平均は1日あたり約40人にまで減少した。

ただし、既に述べた通り新規感染者数は増加しつつあるため、数週間遅れでやってくる死者数の増加に警戒しなければならない。

死者数が再び増加した場合は、ロックダウンを再始動すべきという圧力が各州知事にかかる可能性もある。ただし、ファーチ博士は再び規制を強化すべきとは考えていないという。

ファーチ博士は記者団に対し、「ロックダウンを再び導入することはないと思う。現在我々は、感染者数が急増している地域の対処方法を検討している」と述べた。

現在、世界中の研究者がワクチン開発に全力を注いでいる。しかし専門家たちは、早くても来年、2年~3年かかる可能性もあり得る予想している。我々はしばらくの間、コロナウイルスと共存しなければならないだろう。

ワシントン大学の専門家が考案した”予測モデル”は、大統領選挙の1カ月前までにアメリカの死者数は20万人を超えると予想している。

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