◎ウクライナ軍によると、ロシアはヘルソン州に追加部隊を派遣し、地上戦の準備を進めている可能性があるという。
ロシアのショイグ(Sergei Shoigu)国防相は9日、ウクライナ南部ヘルソン州の部隊を撤退させると発表した。
ロシアは3月に同州を占領。黒海に艦隊を展開した。
ウクライナ政府はロシアの発表に懐疑的な見方を示し、ウクライナ軍を油断させる「偽旗作戦」の可能性があると示唆している。
ウクライナ軍によると、ロシアはヘルソン州に追加部隊を派遣し、地上戦の準備を進めている可能性があるという。
一方、米国のバイデン(Joe Biden)大統領はロシアがヘルソン州からの撤退を表明したことについて、「ロシア軍はいくつかの問題に直面している」という見方を示した。
バイデン氏は記者会見で、この決定を予想していたと述べ、ヘルソン撤退によってウクライナとロシアは「それぞれの立場を再調整」ができると説明した。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は今週、ロシアの出方によっては和平交渉に応じる可能性があると示唆した。
ヘルソン州はウクライナの主要都市の中で唯一、陥落した都市である。
しかし、特別軍事作戦を指揮する総司令官はヘルソンへの「補給」は不可能と指摘し、撤退を表明した。
ロシアの国営テレビ局はショイグ氏とスロビキン(Sergey Surovikin)総司令官が会談する様子を放送。スロビキン氏がヘルソン州の州都ヘルソン市から撤退し、ドニエプル川の左岸に防衛線を構築すると提案すると、ショイグ氏はこれを認めた。
ロシアはヘルソン州を含むウクライナ4州を強制併合しており、この撤退は軍事的野心に大きな打撃を与えることになるだろう。
バイデン氏は中間選挙で共和党に下院の主導権を奪われる可能性が高いことを念頭に置き、「ウクライナに対する超党派の支援が継続されることを望む」と述べた。
共和党は以前、ウクライナに対する軍事・人道支援を見直すと表明していた。しかし、米主要メディアは共和党関係者の話を引用し、「直ちに見直される可能性は低い」と報じている。
バイデン氏はロシアが中間選挙後にヘルソン撤退を発表したことは「興味深い」と指摘した。
ウクライナ側は撤退表明に疑問を抱いている。
ゼレンスキー氏は9日に公開した動画で、「我々は慎重に動いている」と述べた。
またゼレンスキー氏はロシア軍が撤退するか否かに関係なく、奪われた領土をすべて取り戻すと改めて表明した。
テレグラムやフェイスブックにはヘルソン市に関する投稿が多数寄せられている。あるユーザーは「チェンチェの部隊を目撃した」と投稿している。
南部ウクライナ軍はSNSに、「不用意に進めば罠に引き込まれる可能性がある」と投稿している。
ロシアメディアによると、プーチン(Vladimir Putin)大統領は軍高官の会議に出席しなかったとみられる。
一方、これまでロシア軍の動きを批判してきた組織と政府はヘルソン撤退を歓迎した。
ロシアの民間軍事企業ワグネルの代表プリゴジン(Yevgeny Prigozhin)氏はSNSに、「この決定は勝利へのステップではないが、悩まず、偏執狂にならず、最善策を導き出し、間違いに取り組むことが重要である」と投稿している。
チェチェン共和国の首長カディロフ(Ramzan Kadyrov)氏は「スロビキン総司令官は批判を恐れず行動した」と述べている。
欧米のシンクタンクなどによると、南部ウクライナ軍のここ数週間の進軍速度は減速したが、ドニエプル川に架かる数少ない橋がウクライナ軍の攻撃で破壊されたことで、ロシアの補給はますます困難になっていた。
ロシアはヘルソンの市民数万人をロシア領内やクリミア半島に移住させたとみられる。