◎ハイチの治安は昨年7月のモイーズ大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。
2022年10月10日/ハイチ、首都ポルトープランス、アンリ首相に退陣を求めるデモ(Odelyn Joseph/AP通信)

米国とカナダ両政府は15日、ギャングの暴力と壊滅的な経済危機に見舞われている中米ハイチに装甲車と物資を送ったと発表した。

米国務省によると、送った装備品はハイチ政府が購入したもので、首都ポルトープランスに軍用機で送られたという。装備の詳細は明らかにされていない。

中南米とカリブ海を監視する米軍の南方司令部は声明で、「物資輸送は米空軍とカナダ空軍の共同作戦である」と説明したものの、その詳細は明らかにできないとした。

国務省は装備について、「暴力を煽り、人道支援の流れとコレラの蔓延を食い止める努力を妨げている犯罪組織との戦いを支援するもの」と説明している。

世界保健機関(WHO)の米州地域事務局である汎米保健機構(PAHO)は、「ハイチ国内でコレラ感染を疑われる患者は14日時点で560人以上、入院患者は約300人、死亡者は確認できているだけで35人」と報告している。

WHOによると、実際の感染者はこれよりはるかに多い可能性があるという。

ハイチの治安は昨年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺事件と8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは3カ月ほど前から「G9&Family」と「G-Pep」と呼ばれる2つのギャングが地域の支配権をめぐって激しい戦闘を繰り広げており、国連によると、7月中旬以降の死者、負傷者、行方不明者は確認できているだけで500人を超え、数万人が国内避難民となった。

ポルトープランスではアンリ(Ariel Henry)首相に辞任を要求する抗議デモも続いている。デモ隊は燃料補助金の廃止を決めたアンリ氏の辞任と暴力の終結を求めている。

アンリ氏は先月、予算が枯渇しているとして補助金の廃止を決め、国民に理解を求めたものの、多くの市民が日用品と燃料価格の高騰に不満を表明。街頭デモが始まり、一部地域では略奪に発展した。

一方、数百人を殺害したと告発されているギャングの「G9&Family」は先月、ポルトープランスの主要燃料ターミナルを占領し、政府に圧力をかけている。

ギャングの台頭により、全土で燃料、食料、水などの基本的な物資が手に入りにくくなり、ガソリンスタンドは閉鎖、医療機関はサービスを縮小、銀行や食料品店は時間を限定して何とか営業している。

政府報道官は15日、武装ギャングがポルトープランスの燃料ターミナルを襲撃し、燃料2万8000ガロン以上を強奪したと発表した。地元メディアによると、ギャングは石油タンクローリー少なくとも2台を押収したという。

このターミナルは9月12日に閉鎖され、1000万ガロン以上のガソリンとディーゼル、80万ガロン以上の灯油を貯蔵しているとみられる。襲撃を受けたのは今週2回目だ。

国連のグテレス(Antonio Guterres)事務総長は先週、ハイチの治安悪化とコレラ蔓延の可能性に深刻な懸念を表明し、国連平和維持軍を派遣する必要があると国際社会に提案した。

安保理は近日中にこの問題について協議するとみられる。

2022年10月10日/ハイチ、首都ポルトープランス、アンリ首相に退陣を求めるデモ(Odelyn Joseph/AP通信)
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