米軍司令官がキューバ軍幹部と会談、異例の接触、緊張高まる中
トランプ政権は体制改革を迫る構えを崩していないが、強硬策がかえって地域の不安定化を招く恐れもある。

米南方軍(SOUTHCOM)のドノバン(Francis L. Donovan)司令官が29日、キューバ東部のグアンタナモ米海軍基地周辺でキューバ軍高官と会談した。米国とキューバの関係が急速に緊張する中で行われた異例の接触であり、軍事衝突への懸念が高まる中でも双方が対話を維持しようとしている姿勢が浮き彫りとなった。
会談にはドノバン氏のほか、キューバ軍の大将らが出席した。SOUTHCOMによると、協議ではグアンタナモ基地周辺の安全確保や作戦上の連携、部隊の警戒態勢などが議題となった。会談は基地境界付近で実施され、偶発的な衝突の回避や安全管理の強化が主な目的だったとされる。
会談の背景には、トランプ政権による対キューバ圧力の強化がある。米国は今年に入り、キューバ政府に対する経済制裁を拡大し、石油供給を制限する措置を相次いで導入した。さらにトランプ(Donald Trump)大統領はキューバ指導部に対し改革を求める強硬姿勢を鮮明にしており、「次はキューバだ」と発言するなど軍事的圧力を示唆する場面もあった。こうした発言はキューバ側の警戒感を強めている。
米政府はベネズエラ情勢への介入や中南米地域での軍事活動を活発化させている。キューバ共産党は米国が地域で進める軍事作戦や海上封鎖政策を自国への圧力の一環と批判し、米軍による軍事行動の可能性について警告を発してきた。キューバのロドリゲス(Bruno Rodríguez Parrilla)外相は仮に米国が軍事介入に踏み切れば双方に甚大な被害が生じるとの認識を示している。
一方で、米政府高官によるキューバとの接触は完全には途絶えていない。4月には米代表団がハバナを訪問し、政治改革や経済政策について協議を行ったほか、5月にはラトクリフ(John Ratcliffe)CIA長官もキューバ当局者と会談したと報じられた。しかし、米側は協議の進展に不満を抱いており、その後も追加制裁を実施している。
今回の会談は緊張が高まる状況下でも軍事的な誤算を防ぐための危機管理措置としての意味合いが強い。米国はグアンタナモ基地に駐留する部隊の交代を進め、約1300人規模の海兵隊員や海軍要員を新たに配置する計画も発表している。軍事的な備えを強化しつつも、直接対話によって衝突回避を図るという二重の戦略がうかがえる。
専門家の間では、経済危機や電力不足に苦しむキューバへの圧力がさらに強まれば、社会不安や大量移民の発生につながる可能性があるとの見方も出ている。トランプ政権は体制改革を迫る構えを崩していないが、強硬策がかえって地域の不安定化を招く恐れもある。今回の会談は米キューバ関係が対立と対話の両面を抱えながら不透明な局面に入っていることを示す象徴的な出来事となった。
