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中国、「デジタル人民元」の導入範囲を拡大、課題も

中国人民銀行(中銀)が主導するデジタル人民元は、現金を電子化した法定通貨であり、民間企業が発行する電子決済サービスとは異なり国家が直接管理する。
デジタル人民元のイメージ(Getty Images)

中国政府が中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタル人民元(e-CNY)の普及を加速させている。景気減速や消費低迷が続く中、地方政府による補助金支給や公共支出、さらには抽選キャンペーンなどを通じて利用機会を拡大し、決済インフラとしての定着を図る動きが広がっている。

中国人民銀行(中銀)が主導するデジタル人民元は、現金を電子化した法定通貨であり、民間企業が発行する電子決済サービスとは異なり国家が直接管理する。中国は主要国の中でもCBDC開発で先行しており、すでに多数の都市で試験運用を実施してきた。しかし、日常生活への浸透は当初の期待ほど進まず、利用促進が課題となっていた。

こうした状況を受け、中国各地の地方政府は新たな取り組みを相次いで導入している。住宅購入支援金や家電買い替え補助金、育児支援金などの行政給付をデジタル人民元で支給する事例が増加しているほか、利用者向けの抽選イベントも行っている。当選者にはデジタル人民元が配布され、指定された店舗やオンラインサービスで利用できる仕組みとなっている。

政府当局者はこうした政策によって消費を刺激すると同時に、デジタル人民元の利用習慣を定着させる狙いがあると説明する。特に地方財政支出をデジタル人民元経由で行うことで、資金の流れを効率的に「把握」し、補助金の不正利用防止や行政コスト削減につなげたい考えだ。

一方で、利用拡大には課題も残る。中国ではすでにアリババ系のアリペイやテンセント系のウィーチャットペイが圧倒的なシェアを持ち、多くの消費者が日常的に利用している。そのため、デジタル人民元がこれら既存サービスと比べてどのような利便性を提供できるかが普及の鍵を握る。利用者の中には、既存の決済手段で十分であり、新たなアプリや口座管理の必要性を感じないとの声もある。

また、政府による取引データの管理に対する懸念も指摘されている。中国当局はプライバシー保護に配慮した設計を採用していると説明するが、専門家の間では取引履歴の追跡可能性を巡る議論が続いている。

それでも中国政府は、デジタル人民元を将来的な金融インフラの中核と位置付けている。国内決済の効率化だけでなく、国際取引や越境決済への活用も視野に入れており、一部の国や地域との実証実験も進められている。今回の利用促進策はデジタル人民元を試験段階から本格運用へ移行させる重要な一歩とみられている。中国が国家主導で進めるデジタル通貨戦略は、今後の国際金融システムにも少なからぬ影響を与える可能性がある。

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