SHARE:

キューバ経済危機、多くの高齢者が困窮、ゴミをあさる人も

旧市街の教会では週に数回、質素な食事が提供されており、多くの高齢者の命綱となっている。
2026年4月15日/キューバ、首都ハバナの通り(AP通信)

深刻な経済危機に直面するキューバで、多くの高齢者が生活の支えを失い、自力で生き延びることを余儀なくされている。AP通信によると、首都ハバナでは年金だけで生活できない高齢者が増え、教会や地域の支援に頼る姿が日常的に見られるようになった。

旧市街の教会では週に数回、質素な食事が提供されており、多くの高齢者の命綱となっている。84歳の女性は月額年金が約4ドルに過ぎず、家族からの送金もない中で、この食事支援に頼らざるを得ない状況にある。国営配給所で得られるパンや米、豆といった最低限の食料だけでは生活が成り立たない状態だ。

今回の危機で最も大きな打撃を受けているのが高齢者層である。多くは教師や医師、技術者などとして国家に仕えてきた元公務員だが、受け取る年金は月10ドル未満にとどまる。長年維持されてきた補助制度も縮小し、生活は一層厳しさを増している。さらに、若年層の国外流出が続いていることから、家族による支援も得にくく、孤立が深刻化している。

経済悪化の背景には燃料不足の深刻化がある。特に米国による石油禁輸措置が影響し、エネルギー供給の逼迫が経済全体を圧迫している。物資不足やインフレの進行により、日常生活に必要な商品すら入手が困難となり、高齢者の生活基盤を直撃した。

キューバはもともとラテンアメリカでも高齢化が進んだ国で、2024年時点で人口の約26%が60歳以上と、地域平均のほぼ2倍に達している。加えて、ここ数年で約150万人が国外へ流出し、人口が大きく減少した。こうした人口構造の変化は社会全体の支え手を減少させ、高齢者の孤立をさらに加速させている。

街中ではゴミをあさる高齢者や配給を求めて長い列に並ぶ姿が目立つようになった。中には路上で物を売るなどしてわずかな収入を得る人もいるが、多くは安定した収入源を持たない。かつて革命を支えた世代が、老後に厳しい現実に直面している状況である。

こうした事態を受け、共産党は近年、民間による高齢者ケアサービスの提供を認めるなど対応を急いでいる。これは国家が福祉を一元的に担ってきた従来の体制からの大きな転換であるが、費用負担の問題から利用できる人は限られているとみられる。

それでも多くの高齢者は、現在の困難を外部要因、とりわけ米国との関係に起因するものと捉え、共産党への信頼を保っている。長年にわたり社会主義体制の下で生きてきた世代にとって、現状は苦しくとも国への帰属意識は根強い。

今回の危機はキューバ社会が抱える構造的な問題を浮き彫りにした。経済制裁やエネルギー不足といった外的要因に加え、人口減少と高齢化が重なり、従来の社会保障モデルが機能不全に陥りつつある。高齢者が尊厳を保って生活できる体制をいかに再構築するかが、今後の大きな課題となっている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします