アルゼンチン政府がメディア規制、大統領府への立ち入り禁じる
今回の措置は今月、約60人の記者の入館権限が一斉に停止されたことで明らかになった。
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アルゼンチンのミレイ政権が大統領府からメディアを締め出す措置を取ったことで、報道の自由への懸念が急速に高まっている。問題となっているのは、首都ブエノスアイレスにある大統領官邸への立ち入りを、認証を受けた記者も含め全面的に禁じた決定である。
今回の措置は今月、約60人の記者の入館権限が一斉に停止されたことで明らかになった。政府側はテレビ局の記者がスマートグラスを用いて内部を撮影し放送したことを問題視し、「スパイ行為」の疑いがあると主張している。これを受けて記者の入館を制限したと説明するが、当該記者は事前に取材許可を得ていたと反論している。
ミレイ(Javier Milei)大統領はこれまでも報道機関に敵対的な姿勢を取ってきた。自身のSNS上で記者を「汚らわしい人間」などと中傷し、AIで生成した画像を使って特定のジャーナリストを揶揄するなど、過激な言動が目立つ。こうした強硬姿勢はトランプ(Donald Trump)米大統領と比較されることも多く、既存メディアを敵視する政治手法の一環とみられている。
報道機関の締め出しは今回が初めてではない。政権はこれ以前にも特定メディアの取材制限や記者資格の剥奪を行い、政府とメディアの関係は悪化の一途をたどっている。また、国営メディアの機能縮小や情報公開制度の制限なども進められており、情報アクセスの透明性低下が指摘されている。
こうした動きに対し、国内外のメディアや人権団体は強く反発している。報道の自由を監視する団体は今回の措置を「1983年の軍事政権終結以降で最も深刻なメディアへの攻撃」と位置付け、民主主義の根幹を揺るがすものだと批判した。野党議員も政府を提訴するなど、政治問題としても波紋が広がっている。
さらに、カトリックの司教団も懸念を表明し、対話による解決を呼びかけた。声明では、表現の自由と国民の知る権利を尊重する必要性が強調され、過激な言論の応酬を避けるべきだと指摘している。
現場の記者からは「政府による情報統制の強化であり、国民が公的情報にアクセスする権利が損なわれる」との声が上がっている。実際、大統領府の記者室は1940年代から継続的に運用されてきたが、今回の措置により機能停止に追い込まれた。
ミレイ政権はSNSや支持者向けメディアを通じた直接発信を重視し、記者会見や公式ブリーフィングをほとんど行っていない。このため、政府情報が選別的に発信される傾向が強まり、権力監視の役割を担う報道機関の機能が弱体化するとの懸念が広がっている。
今回の問題は単なる取材制限を超え、民主主義における報道の役割そのものを問い直す事態となっている。経済改革の停滞や支持率の低下が指摘される中、政府が批判的報道を抑え込もうとしているのではないかとの見方もある。今後、司法判断や国内外の圧力がどのように影響するかが注目される。
