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米司法省、メキシコ州知事に近い人物を麻薬関連容疑で拘束

米国では4月末、ニューヨーク連邦地検がロチャモヤ氏を含む現職・元政府関係者らを麻薬密輸共謀などの罪で起訴していた。
メキシコ、首都メキシコシティ(Bloomberg)
米司法省は15日、メキシコ西部シナロア州のルベン・ロチャモヤ(Rubén Rocha Moya)知事に近い関係者の男を、麻薬カルテルとの関係を巡る容疑で拘束したと明らかにした。米側はこの人物が世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルの活動を支援し、麻薬密輸や資金洗浄に関与していた疑いがあるとして捜査を進めている。今回の拘束はメキシコの政治家と犯罪組織との癒着疑惑を巡り、米国が圧力を強める中で行われたもので、両国関係にも影響を及ぼす可能性が出ている。

司法省によると、拘束された人物はロチャモヤ氏の側近として長年活動し、州政府や治安機関との接点を利用してカルテル側に便宜を図っていた疑いがある。捜査当局はシナロア・カルテルの一派「ロス・チャピトス」と政治関係者との協力関係に注目しており、選挙支援や見返りとしての保護工作が行われていた可能性を調べている。ロス・チャピトスは服役中の麻薬王エル・チャポことグスマン(Joaquin Guzman)受刑者の息子らによる勢力として知られる。

米国では4月末、ニューヨーク連邦地検がロチャモヤ氏を含む現職・元政府関係者らを麻薬密輸共謀などの罪で起訴していた。起訴状では、被告らがシナロア・カルテルから賄賂や政治支援を受ける見返りに、米国向けのフェンタニルやコカイン、メタンフェタミンの密輸を黙認したとされている。現職州知事に対する米国の起訴は極めて異例で、米政府が麻薬カルテルだけでなく、それを支える政治ネットワークにも捜査対象を広げていることを示している。

ロチャモヤ氏は一連の疑惑を全面的に否定している。米側の主張について「政治的動機に基づく攻撃だ」と反発し、自らの潔白を訴えている。5月初旬には地元検察による調査が進む間、州知事職を一時離れる考えを表明した。シェインバウム(Claudia Sheinbaum)大統領も、「明確な証拠が示されなければ政治的意図を疑わざるを得ない」と述べ、米国の対応に不快感を示している。

背景には、米国で深刻化する合成麻薬フェンタニル問題がある。米政府は近年、メキシコの犯罪組織が大量のフェンタニルを米国内へ流入させているとして対策を強化。トランプ政権はカルテル壊滅を外交・安全保障上の重要課題に位置付けている。特にシナロア・カルテルは世界最大級の麻薬組織として知られ、米国内の薬物過剰摂取問題の主要因の一つとされる。

しかし、米国による一連の起訴や拘束措置はメキシコ国内で「主権侵害」と受け止められる側面も強い。メキシコ政府は麻薬対策で米国との協力を維持する一方、外国による内政介入には強く反発している。専門家の間では、今回の事件が両国の治安協力に新たな緊張をもたらす可能性があるとの見方も出ている。米国が今後さらに政治家や治安当局者への捜査を拡大するかどうかが注目されている。

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