◎アフリカ北部のチュニジアとリビアにはサハラ砂漠以南のサヘル地域から西欧への亡命を希望する移民が押し寄せている。
チュニジア沖、西欧への亡命を目指す移民(Getty Images/AFP通信)

チュニジアの沿岸警備当局は26日、沖合で亡命希望者を乗せたボートが少なくとも2隻沈没し、29人の死亡を確認したと発表した。

地元メディアによると、同国沖ではこの数日、移民船の事故が多発しており、少なくとも5隻が沈没したという。

アフリカ北部のチュニジアとリビアにはサハラ砂漠以南のサヘル地域から西欧への亡命を希望する移民が押し寄せている。人々は頼りないゴムボートやボロボロの木造船に乗り、イタリアのシチリア島などを目指す。

チュニジアのサイード(Kais Saied)大統領は1月末、不法移民が多くの犯罪に関与していると非難し、取り締まりを強化すると宣言。当局はアフリカ系の移民数百人を逮捕し、サイード氏の支持者による人種差別事件も急増している。

一方、イタリアのランペドゥーザ島の関係者は26日、直近24時間に2500人もの移民が海岸に押し寄せ、圧倒されていると声明を出した。

イタリアのメローニ(Giorgia Meloni)首相は同国を含む欧州の主要国が「移民の大津波」に飲まれる可能性があると警告している。

チュニジアは西欧を目指す移民の拠点のひとつであり、国連の統計によると、今年イタリアの海岸に上陸した移民のうち、少なくとも1万2000人がチュニジアを出港したという。昨年の第1四半期は1300人だった。

ロイター通信によると、チュニジアの沿岸警備隊は移民の出航を阻止する措置を講じており、過去4日間で約80隻を拿捕。3000人以上を拘束したという。

チュニジアの移民はサイード氏のヘイトスピーチがもたらした暴力や嫌がらせに耐え兼ね、同国を離れようとしている。

アフリカ連合(AU)と主要な人権団体はサイード氏の発言を非難している。地元メディアによると、首都チュニスでは移民に対する暴力や嫌がらせが急増しているという。

コートジボワールやギニアなどはサイード氏の発言を受け、チュニジアに入った自国民を本国に送還している。

チュニジアの経済状態は観光業の低迷や食料・燃料価格の高騰で悪化の一途をたどっており、国際通貨基金(IMF)との融資交渉も難航している。

米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は今月、チュニジア政府にIMFとの交渉を急ぐよう警告した。

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