国連当局者によると、国連とエチオピアは紛争で荒廃したティグライ地域への援助を許可する協定に署名したという。

これにより、エチオピア政府軍とティグレ人民解放戦線(TPLF)との戦闘の影響で食糧難に陥ったティグライ地域の住民、約600万人に食糧や医薬品などの物資を提供できるようになった。

国連の報道官、サビアノ・アブレウ氏は、12月2日から現地のニーズ調査を開始すると述べた。

サビアノ・アブレウ氏:
「支援を必要とする全ての人に物資を提供できるよう準備を進めている。国連とエチオピアは紛争当事者と協力して、ティグライと近隣のアムハラ地域およびアファール地域の援助に尽力する」

これまでのところ、エチオピア政府は援助協定について声明を発表していない。

伝えられるところによると、政府軍とTPLFの戦闘で民間人数百人が犠牲になったという。ただし、戦地周辺の通信網は遮断されており、情報の正否は確認できていない。

エチオピアのアビィ・アハメド首相は11月28日にティグライの州都メケレを支配したと述べたが、TPLFは「戦闘は終わっていない」と主張している。

なお、情報筋によると、TPLFの高官、ケリヤ・イブラヒム氏が政府軍に降伏したという。同氏は地方議会で議長を務めていた。

ティグライ地域では100万人以上が国内避難民になったと考えられており、そのうち45,000人以上が隣国スーダンの難民キャンプに逃れた。

2020年12月1日 AP通信/エチオピア、仮設避難所に向かうバス

国連のアブレウ報道官は協定について、「政府軍が支配するティグライ地域での活動および現地へのルートの安全を保証される」と述べた。

また、ロイター通信によると、政府軍は現地へのルートを確保するための組織を設立したという。

ティグライ地域で援助を必要としている人々の中には、隣国エリトリアの難民、約10万人も含まれている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、エリトリア難民数千人分の食糧が尽き、飢餓の危機に直面しているという。

一方、ティグライの南東端の町、アラマタでは通信が完全に復旧した。しかし、戦闘地周辺や西部の町の復旧はほとんど進んでいない。

アラマタの居住者の男性はBBCニュースの取材に対し、「戦地の情報がなく、何が起きているのか全く分からなかった。アラマタは被害を受けておらず、住民の生活は正常に戻っている」と語った。

また、「スーダンとの国境付近に住んでいる叔父と連絡が取れず、心配している」と述べ、1日も早い通信網の回復と紛争の完全終結を訴えた。

赤十字国際委員会(ICRC)によると、ティグライ地域と国境付近で放棄された村や難民キャンプを発見したという。

11月4日から始まった戦闘の犠牲者数は政府も把握できておらず、人権および人道支援団体は、民間人を含む数百人が殺害されたと報告している。

ティグライについて知っておくべきこと

・2020年12月1日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、難民の栄養失調と飢餓を警告。

・2020年11月29日、赤十字病院、医療用物資が「危険なほど不足」していると警告。

・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。

・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始

・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。

・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。

・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。

・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。

・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃

・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。

・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。

・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。

・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。

・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。

・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。

・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。

・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。

・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊

・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。

・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。

・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名

・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。

・2018年の避難民数は推定140万人。

・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。

・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。

・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。

オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。

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