◎西パプア州とパプア州では半世紀以上紛争が続いており、解決の見通しはまったく立っていない。
インドネシアの西パプア州に拠点を置く「西パプア民族解放軍(TPNPB)」は10日、先月人質に取ったニュージーランド人パイロットの写真と動画を公開した。
TPNPBの報道官はメディアに宛てた声明で、「男性は生きている」と主張。男性は様々な武器を持った男たちに囲まれ、地面に置かれた木片の上に座っていた。
この男性は地元の航空会社スシ・エアーのパイロットであり、先月、西パプア州の隣の地域に小型機で物資を運ぶ途中、拘束された。
男性は銃を持った男に声明を読むよう促され、「パプアが独立するまで外国人パイロットはパプアで働くことも飛ぶことも許されず、TPNPBは国連に独立交渉の仲介を要請する」などと述べた。
インドネシア軍の報道官は10日の記者会見で、「この動画はテロリストのプロパガンダである」と断じた。
また報道官は「捜査当局は男性が生きているという情報をつかんでおり、救出に向けた取り組みを継続する」と強調した。
男性は別の動画で家族にメッセージを送っている。それによると、男性は食料と水を与えられ、今のところ命の危険を感じるような状況には置かれていないという。また男性はスシ・エアーに対し、家族の口座に給料を振り込むよう要請した。
TPNPBのリーダーとされる男はこの動画で要求を読み上げている。「西パプアの聖戦士は国連安全保障理事会に対し、インドネシア軍との武力衝突を調停するよう要請する」
また男はニュージーランド、オーストラリア、米国、イギリス、フランス、中国、ロシアに対し、インドネシアへの軍事支援をやめるよう要請した。
インドネシア領パプア(旧オランダ領)はインドネシア本島とは民族的・文化的に大きく異なる。パプアは1961年にオランダから独立したものの、2年後にインドネシアの支配下に置かれた。
インドネシア政府は国連が主導した1969年の投票でパプアを編入。それ以来、西パプア州とパプア州では半世紀以上紛争が続いており、解決の見通しはまったく立っていない。
TPNPBや反政府ゲリラ「自由パプア運動(OPM)」などはパプアの分離独立を目指している。
TPNPBは先月6日、男性が操縦する小型機が滑走路に着陸した直後、襲撃した。
この小型機は乗客5人を乗せ、西パプア州の隣の地域に向かう予定だった。TPNPBは乗客5人がパプアの先住民族であることを理由に解放。パイロットのみ拘束した。