中国・内モンゴルで再生可能エネルギーの導入加速、一方で石炭火力も増設中
内モンゴル自治区オルドス市のある団地近くには、300万枚以上の太陽光パネルを設置した巨大な太陽光発電所が広がる。
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中国北部の内モンゴル自治区で、太陽光や風力発電の導入が急速に進む一方、石炭火力発電や石炭産業への依存も維持されるという、中国のエネルギー政策の実態が鮮明になっている。世界最大規模の再生可能エネルギー開発を進めながらも、安定した電力供給やエネルギー安全保障を理由に石炭を引き続き重要な電源と位置付ける姿勢は、中国全体のエネルギー転換を象徴するものとなっている。
内モンゴル自治区オルドス市のある団地近くには、300万枚以上の太陽光パネルを設置した巨大な太陽光発電所が広がる。遊牧文化を象徴する「駆ける馬」の形に配置されたこの発電施設は、北部クブチ砂漠で進められている大規模再生可能エネルギー開発の中核を担う。一方、その近くには石炭火力発電所が立地し、発電した電力を約700キロ離れた北京市へ送電している。再生可能エネルギーと石炭火力が隣り合う光景は、中国が両者を並行して活用する「二本柱」のエネルギー政策を象徴している。
中国は世界最大の風力・太陽光発電設備を保有し、近年設置容量を急速に拡大している。しかし、2025年時点でも国内で消費する電力の約51%は石炭火力によって賄われている。内モンゴルでは過去5年間で風力と太陽光の設備容量が2倍以上に増加したものの、2025年の発電量は石炭火力が約5900億キロワット時だったのに対し、風力と太陽光を合わせても約2770億キロワット時にとどまった。依然として石炭が発電の中心を占めている。
内モンゴルは中国最大の石炭生産地でもある。年間約12億トンの石炭を採掘し、中国全体の約4分の1を占める。その6割以上は他地域へ輸送され、国内の電力供給を支えている。また、内モンゴルは国家プロジェクト「西電東送」の重要拠点でもあり、西部で生産した電力を東部沿海部の工業地帯へ送る役割を担う。2025年には自治区内で発電した電力の約40%に当たる3500億キロワット時が域外へ送電され、約1億2000万世帯分の年間消費電力に相当する規模となった。
自治区当局は再生可能エネルギーの普及が進んでも石炭火力は当面必要との認識を示している。風力や太陽光は天候によって発電量が大きく変動するため、不足時には石炭火力で電力供給を補完する必要があるためだ。当局は石炭火力について、今後、主力電源から需給調整を担う「補完電源」へ役割を移していくと説明する。自治区内の全石炭火力発電所では設備改修を進め、発電能力の15%程度まで出力を落として運転できるようにし、再生可能エネルギーを優先利用しやすい体制を整えているという。
ただし、専門家はこうした運用が現実には容易ではないと指摘する。火力発電所を頻繁に出力調整すると設備への負荷や運営コストが増加するほか、中国では長期電力契約や省をまたぐ電力取引制度が普及しているため、再生可能エネルギーを柔軟に送電網へ組み込む仕組みが整っていない。そのため、石炭火力を補完電源に転換するとしても、実際には従来通り高い稼働率が続く可能性が高いという。
一方、中央政府は人工知能(AI)向けデータセンターや電気自動車(EV)の普及、製造業の拡大による電力需要の急増を見据え、送電網や蓄電設備への投資を拡大している。工場の操業時間を風力や太陽光の発電量に合わせて調整する仕組みづくりも進め、再生可能エネルギーの利用効率向上を目指す。
それでも内モンゴルでは、石炭を原料として石油や天然ガス、化学製品を生産する石炭化学産業の拡大も進められている。中東情勢の緊迫化などを受け、輸入原油や液化天然ガスへの依存を減らすことが国家安全保障上重要になっているためだ。しかし、石炭化学は通常の石炭火力発電以上に二酸化炭素を排出するとの指摘もあり、中国が掲げる脱炭素目標との整合性が問われている。内モンゴルのエネルギー政策は脱炭素と経済成長、エネルギー安全保障という三つの課題を同時に追求する中国の難しいかじ取りを映し出している。
