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コロンビアで暴力激化、大統領選を前に治安情勢悪化

これらの攻撃の多くは、かつての左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」の離脱派である「FARC-EMC」によるものとみられている。
2026年4月26日/コロンビア、南西部カウカ州、走行中のバスが爆破された現場(AP通信)

南米コロンビアで大統領選挙を目前に控え、武装勢力による攻撃が相次ぎ、治安情勢が急速に悪化している。政府と左翼ゲリラの和平プロセスが揺らぐ中、選挙の公正性や国民の安全に対する懸念が強まっている。

南西部では先週、爆発物やドローンを用いた攻撃が短期間に集中して発生した。国防省によると、わずか数日の間に少なくとも26件の攻撃が確認され、軍施設や警察だけでなく民間人も標的となった。中でもカウカ州のパンアメリカン・ハイウェイで起きたバス爆破事件では21人が死亡するなど深刻な被害が出ている。

これらの攻撃の多くは、かつての左翼ゲリラ組織「コロンビア革命軍(FARC)」の離脱派である「FARC-EMC」によるものとみられている。同組織は2016年の和平合意に参加せず、現在も麻薬取引や違法採掘などを資金源として活動を続けている。指導者イバン・モルディスコ(Iván Mordisco)率いる勢力は政府との交渉において、影響力を高める狙いで攻撃を激化させているとの見方がある。

攻撃が集中しているカウカ州などの地域はコカ栽培や密輸ルートをめぐり長年武装勢力の争奪の場となってきた。今回の一連の事件もこうした違法経済圏の支配を巡る対立が背景にあるとされる。近年はドローン攻撃や車両爆弾など手口も高度化しており、住民の不安は一層高まっている。

こうした状況は、5月31日に行われる大統領選挙にも大きな影響を及ぼしている。現職の左派ペトロ(Gustavo Petro)大統領の後任を選ぶ重要な選挙で、治安問題が最大の争点として浮上している。与党系候補は対話路線の継続を主張する一方、保守候補はゲリラ、麻薬カルテル、その他武装勢力への強硬姿勢を打ち出しており、対応策をめぐる対立が鮮明になっている。

ペトロ政権はこれまで、武装勢力との停戦や交渉を柱とする「全面和平」政策を推進してきた。しかし反対派はこの政策が結果的に武装勢力の再編や勢力拡大を許したと指摘する。実際、FARC-EMCは2023年に始まった和平交渉から離脱し、2024年に政府や対立組織への攻撃を再開した。さらにもう一つの強力な勢力である「FARC-EP」や、同国最大の左翼ゲリラ「民族解放軍(ELN)」も各地で活動を活発化させている。

今回の攻撃は選挙妨害を狙った可能性も指摘されている。候補者らには脅迫が相次ぎ、選挙活動は厳重な警備の下で行われている。過去には大統領候補が殺害される事件も起きており、民主主義の根幹を揺るがす事態への懸念が広がる。

専門家は武装勢力が新政権との交渉を有利に進めるため、自らの軍事力を誇示していると分析する。一方で、こうした暴力の連鎖は国民の政治不信を深め、投票率の低下や選挙結果の正統性にも影響を及ぼしかねない。

長年にわたる内戦の歴史を持つコロンビアにとって、今回の事態は和平の脆弱さを改めて浮き彫りにした。選挙を目前に控え、政府は治安回復と民主的手続きの確保という二重の課題に直面している。暴力の拡大を抑え込めるかどうかが、今後の政治の行方を左右する重要な分岐点となりそうだ。

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