ラテンアメリカ2026年5月15日米国、ベネズエラの原子炉から高濃縮ウランを撤去、IAEAと連携 増永 建太郎 作業は米国、ベネズエラ、イギリス、国際原子力機関(IAEA)の協力によって実施された。2025年12月29日/南米ベネズエラの海岸(ロイター通信)米国務省は14日、ベネズエラ国内にある閉鎖済み研究用原子炉から高濃縮ウランを搬出したと発表した。対象となったのは首都カラカス近郊の科学研究所(IVIC)に設置されていた「RV-1」研究炉で、長年使用されず保管されていた約13キログラムの高濃縮ウランが米国へ移送された。米政府は今回の措置について、「核物質の拡散防止に向けた国際的な安全保障上の成果だ」と強調している。国務省によると、作業は米国、ベネズエラ、イギリス、国際原子力機関(IAEA)の協力によって実施された。搬出されたウランはサウスカロライナ州のエネルギー省施設へ運ばれ、今後は低濃縮化処理を経て原子力燃料として再利用される見通しだ。IAEAは輸送や保安面で技術支援を行い、核物質の安全な管理を支援したという。RV-1研究炉は1960年に臨界に達したベネズエラ唯一の原子炉で、米国の「アトムズ・フォア・ピース」政策の一環として建設された。医療用放射性同位元素の研究や物理実験に利用されたが、1991年を最後に運転を停止し、1997年に正式閉鎖が決まった。その後、施設はガンマ線滅菌設備へ転用されていたが、一部の高濃縮ウラン燃料が残されたままとなっていた。高濃縮ウランは核兵器転用の懸念があるため、国際社会では研究炉からの撤去や低濃縮化が進められてきた。特に冷戦期に建設された研究炉では、高濃縮燃料がそのまま保管されているケースがあり、核セキュリティ上の課題となっている。米国は旧ソ連圏や中南米、アフリカなどで同様の回収事業を継続し、今回のベネズエラ案件もその延長線上に位置づけられる。今回の発表は米国とベネズエラの関係改善を強調する動きとしても注目されている。両国は長年にわたり対立が続き、米国はマドゥロ前政権に対して制裁を科してきた。しかし、今年1月以来、エネルギーや移民問題への対応を背景に対話が再開されている。英紙ガーディアンは今回の核物質搬出が両国の実務協力拡大を象徴する案件だと報じた。一方で、専門家の間では今回搬出された量自体は比較的小規模であり、直ちに核開発リスクへ直結するものではないとの見方も出ている。ただ、ウラン濃縮を巡っては中東でイラン核問題が緊迫化し、米国としては世界各地で高濃縮ウラン管理を徹底する姿勢を示す狙いもあるとみられる。IAEAは声明で、「核物質の安全管理は国際的責任だ」と強調し、今後も各国との協力を継続する方針を示した。