ボリビア「粗悪ガソリン」問題、EVへの乗り換え進む、課題も
長年続いた燃料補助金制度の廃止に加え、「粗悪ガソリン」問題まで発生したことで、ガソリン車への不信感が広がり、都市部では中国製EVを中心に需要が急増している。
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南米ボリビアで深刻化する燃料不足とガソリン価格高騰を背景に、電気自動車(EV)への乗り換えが急速に進んでいる。長年続いた燃料補助金制度の廃止に加え、「粗悪ガソリン」問題まで発生したことで、ガソリン車への不信感が広がり、都市部では中国製EVを中心に需要が急増している。
首都ラパス近郊のエルアルトでは先住民の織物職人シモン・ワンカ(Simon Wanka)さんが中国製の電気SUVを輸入し、家族の移動やアルパカ毛の運搬に利用している。自宅には専用充電設備も設置した。ラパスとエルアルトには公共充電施設がわずか3カ所しかなく、多くの利用者が自宅充電に頼っている。それでもワンカさんは「燃料探しの行列に並ばなくて済む」とEVの利点を語る。
背景には、ボリビア経済を揺るがす燃料危機がある。天然ガス輸出の減少や外貨不足によって、政府は燃料輸入に必要な米ドルを確保できなくなった。ボリビアはディーゼルの約8割、ガソリンの半分以上を輸入に依存しており、国営石油会社YPFBによる補助金維持は年間20億ドル超の財政負担となっていた。各地のガソリンスタンドでは長蛇の列が常態化し、数日待っても給油できないケースが相次いでいる。
こうした状況を受け、パス(Rodrigo Paz)大統領は昨年末末、長年続いた燃料補助金制度を廃止した。これによりガソリン価格はほぼ倍増し、市民生活を直撃した。さらにその直後、輸送業者らが「粗悪ガソリンで車両が故障した」と訴える問題が噴出した。政府は前政権時代にタンク内に残留したガム状物質やマンガンが燃料に混入していたと説明、粗悪ガソリン問題として全国的な騒動に発展した。輸送業界ではストライキや抗議デモが広がり、YPFB幹部の辞任にも発展した。
さらに追い打ちをかけたのが、中東情勢の悪化による原油価格上昇だった。イラン情勢を受けた世界的な燃料価格高騰への不安から、「今後さらにガソリン代が上がる」と考える市民が増加した。54歳の弁護士エベル・ベラ(Ever Vera)さんは3万6000ドル以上を投じてEVを購入、「高かったが、燃料待ちや修理の時間を失わなくて済む」と話している。
税務当局によると、国内のEV登録台数は5年間で500台から3352台へ増加した。特に直近2年間の伸びが顕著で、専門家は「成長は指数関数的だ」と分析する。現在は比較的裕福な層が購入の中心だが、政府が自動車輸入関税を撤廃したことで価格競争が進み、今後さらに普及が進むと見られている。電気自動車の増加に伴い、家庭用充電設備の設置業者など新たなビジネスも生まれている。
一方で、EV普及には課題も多い。公共充電インフラが不足し、地方では停電も珍しくない。また、EVの価格は依然として高額で、多くの市民にとって手が届きにくい。ボリビア経済そのものもインフレと通貨不安に苦しんでおり、燃料危機がいつ沈静化するかは不透明だ。それでも、ガソリン不足と価格高騰を経験した市民の間では、「もうガソリン車には戻れない」という意識が広がり始めている。
