◎トランプ前大統領の上院弾劾裁判は2月8日の週から始まる。
◎弾劾決議案を可決するためには3分の2以上の賛成が必要である。現在の上院の勢力は「民主党50ー共和党50」、共和党員17人が離反すれば、「賛成67ー反対33」でトランプ氏の弾劾は可決される。
2021年1月20日 ロイター通信/フロリダ州のパームビーチ国際空港、トランプ前大統領とメラニア夫人

1月22日、民主党のチャック・シューマ―上院院内総務は、トランプ前大統領に対する弾劾決議案を提出し、「裁判の手続きは来週から始まる」と述べた。

シューマー氏は共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首から裁判を2月まで延期し、トランプ氏の法務チームに弁護の準備期間を与えるよう要請されていた。

チャック・シューマ―上院院内総務:
1月26日に宣誓を行い、裁判は2月8日の週に開始する

マコーネル氏のスポークスマン、ダグ・アンドレス氏は声明の中で、「マコーネル議員は、シューマー議員が審理前段階の延期要請に同意したことを喜んでいる。下院はトランプ前大統領の権利と手続きの期間を無視したが、上院はそれらをすべて守り、関係者の権利を尊重する。その目標は今日達成された。これは適正手続きと公平性の勝利だ」と述べた。

これに対し民主党のナンシー・ペロシ下院議長は、弾劾裁判に対処する時間は十分与えたと反発した。

ナンシー・ペロシ下院議長:
「下院は弾劾裁判における上院の憲法上の権限を尊重し、プロセスの公平性に細心の注意を払ってきた」

「弾劾決議案を上院に送ってから約2週間経過した。私たちの弁護士は上院議員100人の前で戦う準備ができている」

元大統領が弾劾裁判にかけられるのはアメリカ史上初である。一部の共和党員は元大統領に対する裁判は違憲だと主張し、上院内で議論を巻き起こした。

2021年1月22日 上院テレビ/ワシントンD.C.上院、チャック・シューマー上院院内総務

シューマー氏が1月25日から弾劾裁判のプロセスを開始すると発表した後、共和党の上院議員はその判断を厳しく非難し始め、「離反者が17人も出るなどあり得ない」と明らかにした。

弾劾決議案を可決するためには3分の2以上の賛成が必要である。現在の上院の勢力は「民主党50ー共和党50」、共和党員17人が離反すれば、「賛成67ー反対33」でトランプ氏の弾劾は可決される。

しかし、共和党の考えは1月6日のDC暴動から劇的に変化した。

共和党員の暴動に対する怒りは時間と共に薄れ、多くが「先に進むべきだ」と主張し始めている。

ミシシッピ州のロジャー・ウィッカー上院議員は記者団に対し、「弾劾決議案が可決される可能性はゼロだ」と語った。

テキサス州のジョン・コーニン上院議員も、「裁判がどのように進むかはまだ分からないが、3分の2は無理だと思う。民主党の呼びかけにはウンザリしている」と賛成には投じないと断言した。

インディアナ州のマイク・ブラウン上院議員は17人の離反の可能性について、「極めて難しく、民主党は貴重な時間を浪費することになるだろう」と賛成には投じないと匂わせた。

多くの共和党員が元大統領に対する弾劾裁判は違憲だと主張し、下院民主党の権利を無視したスピード可決に反発したうえで、賛成に投じることはないと述べている。

民主党が共和党の意見を聞き入れ、トランプ氏に十分な時間を与えた場合、ジョー・バイデン大統領は最初の1カ月を弾劾裁判で食いつぶす可能性がある。しかし、裁判の期間を短くすれば、多くの共和党員が反対に投票すると考えられている。

現時点で離反する可能性が高いと伝えられている共和党員は、ユタ州のミット・ロムニー氏、メイン州のスーザン・コリンズ氏、ネブラスカ州のベン・サス氏、アラスカ州のリサ・ムルコウスキー氏、ペンシルベニア州のパット・トゥーミー氏の5名。しかし、何かが劇的に変化しない限り、離反者が17人に膨れ上がる可能性はほぼゼロである。

サウスカロライナ州のリンジー・グラハム上院議員は同僚に、「共和党を破壊するような危険は冒せない」と働きかけているという。

トランプ氏の行動に批判的な共和党のNo2、ジョン・スーン上院議員は、「マコーネルのスケジュールでも問題がある」と主張した。

ジョン・スーン上院議員:
「いつ開始するかが非常に重要である。少なくとも民主党の提示したスケジュールには賛成できない。私は適正に手続きが行われたかどうかを見ている」

2021年1月21日 Getty Images/ワシントンD.C.議会議事堂、ナンシー・ペロシ下院議長

マコーネル氏は、トランプ大統領の暴動を煽る演説と暴動発生後の発言を厳しく非難し、「非の打ちどころのない犯罪に相当する」と述べたが、賛成に投じるかどうかは明らかにしていない。

マコーネル氏はCNNニュースの取材の中で、「私が賛成に投票すれば、私は共和党というとまリ木を失うだろう」と述べている。

リンジー・グラハム上院議員は22日に、「アメリカの大統領が弾劾されたことは一度もない。そして、元大統領を弾劾することは違憲であり、悪い前例を作り、国をさらに分裂させ続けるだろう」と述べた。

これに対しシューマー氏は、「大統領や公務員が凶悪な犯罪を犯し、説明責任を回避するために辞任を許可され、将来再び立候補する権利を与えられるなどあってはならない」と主張した。

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