アムネスティ、ワールドカップ渡航注意情報を発表、米国が対象
発表された「トラベル・アドバイザリー(渡航勧告)」は、現在の米国の人権状況が悪化しているとの認識に基づくもので、特に移民政策の厳格化や治安対応の強化が訪問者に影響を及ぼす可能性を指摘している。
とFIFAのインファンティーノ会長(AP通信).jpg)
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルや米国の複数の市民団体は23日、6月に開催されるFIFAワールドカップを前に、米国への渡航に関する注意喚起情報を発表した。大会は米国、カナダ、メキシコの3カ国で共催されるが、そのうち大半の試合が米国内で行われる予定であり、数千万人規模の来訪者が見込まれている。
発表された「トラベル・アドバイザリー(渡航勧告)」は、現在の米国の人権状況が悪化しているとの認識に基づくもので、特に移民政策の厳格化や治安対応の強化が訪問者に影響を及ぼす可能性を指摘している。勧告では、入国時に恣意的に入国を拒否される可能性や、拘束・収容されるリスク、さらには携帯電話やSNSの内容を調べられるなどの厳格な検査を受ける恐れがあると警告している。
また、米国内での移民取り締まり強化に伴い、特定の都市では人種的プロファイリングや抗議デモの抑圧が問題視されているとし、訪問者だけでなく在住者や労働者にも影響が及ぶ可能性があるとした。特に移民背景を持つ人々や人種的少数派、LGBTQ+の人々は、より大きなリスクに直面する可能性があると指摘している。
こうした懸念の背景には、近年の米国における移民政策の大幅な強化がある。報告では、拘束や強制送還の増加、法執行機関による取り締まりの拡大などが挙げられ、これらが国際的なスポーツイベントの開催環境に影響を与える可能性があると分析されている。また、一部の国に対するビザ制限や入国規制により、特定の国のファンが試合観戦のために渡航できない可能性も指摘されている。
さらに、アムネスティは大会期間中の表現の自由や抗議デモの権利にも懸念を示した。スポーツイベントは通常、国際的な交流と多様性を象徴する場であるが、警備体制の強化や法規制によって、こうした自由が制限される恐れがあるとしている。報告では、移民対策機関が大会の安全対策に関与する可能性にも言及し、これが来訪者の不安要因になると指摘している。
一方で、この渡航勧告に対しては強い反発も出ている。米国の観光業界団体は、こうした警告は実態を誇張し、経済的損失を招く可能性があると批判している。観光業はワールドカップによる大きな需要増を期待しており、数千万規模の来訪者による経済効果が見込まれているためだ。業界関係者は「米国訪問が重大な安全リスクであるとの主張は政治的意図によるものだ」と反論した。
また、大会を主催するFIFAも人権尊重への取り組みを強調している。FIFAは公式声明で、国際的に認められた人権の尊重と保護にコミットしているとし、開催国や関係機関と連携して安全で包摂的な大会運営を目指すとした。ただし、人権団体側は具体的な保証や実効性のある対策が十分に示されていないと批判している。
2026大会は史上初めて3カ国共催で行われ、参加国数も48チームに拡大されるなど、過去最大規模の大会となる見通しである。その一方で、移民政策や人権問題、国際政治の影響が大会運営や観客動向に影を落とす可能性が指摘されている。実際、近年は米国への渡航者数が減少傾向にあるとの報告もあり、政策や国際関係が観光需要に影響を与えているとみられる。
今回の渡航勧告は単なる注意喚起にとどまらず、国際的なスポーツイベントと人権の関係を改めて問い直すものとなっている。大会が掲げる「世界をつなぐ」という理念と、開催国の政策や現実との間にどのようなギャップがあるのかが問われており、今後の対応次第では国際社会からの評価にも影響を及ぼす可能性がある。ワールドカップという巨大イベントをめぐり、安全と自由のバランス、そして人権保障の在り方が焦点となっている。
