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英イングランドとウェールズの安楽死法案、時間切れで廃案に

問題となった通称「安楽死法案」は余命6カ月以内と診断された成人が、複数の医師と専門委員会の承認を経て、自らの意思で人生を終える選択を可能にする内容であった。
2026年4月24日/イギリス、ロンドンの議会議事堂前、安楽死法案の成立を求めるデモ(AP通信)

イングランドおよびウェールズで進められていた終末期患者の「医師による自死幇助」を合法化する法案が24日、議会での審議時間切れにより成立しないまま廃案となった。法案は賛否が大きく分かれ、下院を通過していたにもかかわらず、上院での審議遅延により成立に至らなかった。

問題となった通称「安楽死法案」は余命6カ月以内と診断された成人が、複数の医師と専門委員会の承認を経て、自らの意思で人生を終える選択を可能にする内容であった。支持者は苦痛の強い終末期医療において患者の自己決定権を尊重する制度だと主張し、海外での安楽死を選ぶ患者を減らす効果も期待していた。

この法案は2025年に下院で可決されていたが、その後の上院審議で大きく停滞した。反対派議員は1200件以上の修正案を提出し、審議時間を大幅に消費させる戦術を取った。この結果、議会会期末までに十分な採決時間が確保できず、法案は自動的に廃案となった。

上院の反対派は法案が弱者への圧力につながる危険性や、適切な保護措置が不十分である点を問題視した。特に高齢者や障害者が周囲の負担を理由に死を選ばされる可能性があるとして、慎重な審議が必要だと主張した。一方、支持派は民主的に選ばれた下院で可決された法案が、非選挙制の上院によって事実上阻止されたとして強く反発している。

法案を提出した議員たちは今回の結果について、「内容の是非ではなく手続きによって潰された」と批判し、次会期での再提出を表明した。支援団体も終末期患者の尊厳ある選択を求める声は依然として強いとして、法整備の必要性を訴えている。

一方で社会全体では、この問題をめぐる意見は依然として割れている。世論調査では慎重な制度設計を求める声が多く、特に「本人の自由意思が外圧なく保証されるか」という点への懸念が根強い。医療現場からも診断や判断の基準、倫理的負担について慎重な検討を求める意見が出ている。

今回の廃案によりイングランドとウェールズにおける安楽死の合法化は再び先送りとなった。ただし、支持派は政治的な運動を継続する構えであり、この問題が今後の議会でも再び争点となることは確実とみられている。

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