ハンタウイルス、WHO事務局長がカナリア諸島訪問、クルーズ船寄港へ
問題となっているのはオランダ船籍の探検クルーズ船「MVホンディウス号」。乗客乗員合わせて150人余りが乗船し、航海中にハンタウイルス感染が確認された。
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大西洋を航行中のクルーズ船で発生した「ハンタウイルス」感染拡大をめぐり、世界保健機関(WHO)のテドロス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長が9日、船の到着予定地であるアフリカ北西部・スペイン領カナリア諸島テネリフェ島を訪問し、住民に対して「これは新たな新型コロナではない」と強調した。島では感染拡大への不安が広がり、当局は厳戒態勢で乗客らの受け入れ準備を進めている。
問題となっているのはオランダ船籍の探検クルーズ船「MVホンディウス号」。乗客乗員合わせて150人余りが乗船し、航海中にハンタウイルス感染が確認された。これまでに3人が死亡、少なくとも6人の感染が確認されている。感染者の一部は欧州や南アフリカの病院に搬送され、現在も国際的な追跡調査が続いている。
船はアルゼンチン南部を4月に出港し、南極海周辺を巡るルートを航行していた。WHOによると、感染源は南米で感染した乗客である可能性が高いとみられている。今回確認されたのは「アンデス型」と呼ばれるハンタウイルスで、ヒトからヒトへの感染が確認されている数少ない型として知られる。ただし、感染には長時間の濃厚接触が必要とされ、WHOは「一般市民へのリスクは低い」と説明している。
テドロス氏は9日、テネリフェ島港湾の記者団に対し、「2020年の記憶がよみがえるのは理解できる。しかし今回はコロナとは異なる」と述べた。そのうえで、現在船内に症状を示している乗客はいないと説明し、下船作業は厳格な感染対策の下で行われると強調した。
スペイン政府は港湾区域に隔離用スペースを設置し、乗客らを島民と接触させない形で搬送する計画を立てている。船は港に直接接岸せず沖合に停泊し、小型艇で乗客を移送したうえで、各国政府が手配した専用機などで帰国させる方針だ。米政府は自国民17人をネブラスカ州の隔離施設へ移送する計画を進め、イギリスやアイルランドなども独自の監視措置を準備している。
一方、テネリフェ島では観光業への影響を懸念する声も上がっている。カナリア諸島は欧州有数の観光地であり、住民の間では「感染船が来ることで観光客離れが起きるのではないか」との不安が広がった。サンチェス(Pedro Sánchez)首相は「人道上の責任と国際法に基づく対応だ」と説明し、安全性を繰り返し強調している。
今回の事態ではWHOを中心に23カ国が連携し、すでに下船した乗客や接触者の追跡調査が行われている。専門家はアンデス型ハンタウイルスについて、致死率が高い一方、感染力は限定的であり、現時点でパンデミック化する可能性は低いとみている。だが、コロナ禍の記憶が残る中、クルーズ船を舞台にした感染事案が再び世界的な警戒を呼び起こしている。
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