メキシコ首都で失踪者の家族がデモ行進、数千人が市内を行進
デモには数千人が参加し、多くの母親が消息不明となった子どもや親族の写真を掲げながら、市中心部の大通りを行進した。
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メキシコの首都メキシコシティで10日、行方不明となった家族を捜し続ける人々による大規模な抗議デモが行われた。母の日に合わせて毎年実施されている集会だが、今回はFIFAワールドカップの共同開催を目前に控える中で、「華やかな祭典の陰で深刻な人権問題が放置されている」と国内外に訴える色彩が一段と強まった。
デモには数千人が参加し、多くの母親が消息不明となった子どもや親族の写真を掲げながら、市中心部の大通りを行進した。参加者たちは「メキシコ、失踪者数で世界一」などと叫び、政府の無策や捜査の遅れを批判した。会場では麻薬カルテルによる暴力だけでなく、警察や地方当局の腐敗、捜査機関の機能不全が問題の背景にあるとの訴えも相次いだ。
メキシコでは2006年以降、カルテルとの「麻薬戦争」が激化し、誘拐や失踪事件が急増した。政府統計によると、現在の行方不明者数は13万人を超えるとされる。近年も増加傾向は続き、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは活動家や失踪者捜索に携わる家族への脅迫や暴力も深刻化していると警告している。
デモに参加した女性の一人はロイター通信の取材に対し、2012年に娘と親族数人が失踪したと語り、「政府は何もしてくれない。私たちは自分たちで探すしかない」と涙ながらに訴えた。メキシコでは失踪者の家族らが自らスコップを手に集団墓地を探すケースも珍しくなく、国家による十分な支援がない現状への不満が根強い。
今回の抗議では来月開幕するW杯への言及も目立った。メキシコは米国・カナダとともに大会を共催し、メキシコシティでは開幕戦も予定されている。政府は大会成功に向けてインフラ整備や観光振興を進めているが、参加者たちは「世界中の観客に、私たちの現実を知ってほしい」と訴えた。華やかな国際イベントの裏で、多数の失踪事件が未解決のまま放置されているとの批判である。
メキシコ政府は近年、失踪者データベースの見直しを進め、一部については生存の可能性もあるとしている。しかし、人権団体は捜査の透明性不足を問題視し、統計処理だけでは問題解決にならないと反発している。治安悪化への懸念はW杯開催準備にも影を落とし、政府は安全対策強化を急いでいる。
母の日は本来、家族への感謝を祝う日である。しかしメキシコでは、多くの母親にとって「帰らない子どもを探し続ける日」となっている。参加者たちは国際社会の注目が集まるW杯を前に、失踪問題への真剣な対応を改めて求めた。
