◎ロシアがウクライナ東部と北部の国境付近に配備した兵士は15万人を超えた可能性がある。
2月15日、ロシア国防省はウクライナ近郊に配備した部隊の一部を撤退させると発表し、西側諸国との安全保障対話を歓迎すると述べた。
しかし、米国のジョー・バイデン大統領は、「米国はロシアの主張を検証しておらず、侵攻の可能性はまだ十分ある」と述べ、NATO(北大西洋条約機構)と同盟国に警戒を怠らないよう警告した。
バイデン大統領はテレビ演説の中で、「侵攻はまだ大いにあり得る」と述べ、「その人的コストは計り知れないものになる」とロシアを強くけん制した。
またバイデン大統領は、「米国はロシアの侵攻を防ぐために外交の機会を与え続ける」と約束したが、国防省の声明には懐疑的な見方を示した。
バイデン氏は記者団に対し、「米国とその同盟国はウクライナの主権を尊重し、基本原則を犠牲にしない」と強調した。「もしロシアがウクライナに侵攻すれば、世界中の主権国家は躊躇なく対応することになります。もし我々が自由を危険にさらす脅威に立ち向かわなければ、明日はもっと厳しい代償を支払うことになるでしょう...」
ホワイトハウスによると、ロシアがウクライナ東部と北部の国境付近に配備した兵士は15万人を超えた可能性があるという。バイデン大統領は以前の見積もり(13万人)からさらに増加したと危機感を示した。
ロシアの国防相は訓練を終えた部隊の一部に撤退を命じたと述べているが、撤退する部隊の規模や兵士の数は明らかにしていない。
バイデン大統領は、「ロシア軍が撤退するのは良いことだが、我々はまだそれを検証しておらず、彼らが自国の基地に戻ったかどうかは定かではない」と述べ、米国の分析では多くのロシア兵が国境付近にとどまっていると明らかにした。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はバイデン大統領のテレビ演説の数時間前、オラフ・ショルツ独首相との共同記者会見の中で、「西側諸国はロシアの安全保障上の懸念に真剣に対処すべきだ」と述べ、NATOを強くけん制した。
ロシアはウクライナのNATO加盟やNATOの東欧拡大を認めないことを文書で法的に保証するよう西側に求めている。
プーチン大統領は侵攻の可能性を強く否定し、ロシアは戦争を望んでいないと述べる一方、ウクライナのNATO加盟をレッドラインと呼び、それが現実になれば最悪の事態をあり得ると警告している。
バイデン大統領は、「外交を継続するというロシア国防省の提案に同意する」と述べた。また、仮にウクライナ侵攻が現実となり、ロシアに厳しい経済制裁を科した場合、米国経済もエネルギー価格の高騰と物価の上昇に苦しむ可能性があると警告した。
バイデン大統領は、「米国民は民主主義と自由を守るためには多く代償が伴うことを理解している」と述べ、国民に理解を求めた。
米国は自国だけでなく欧州のエネルギー危機を回避するための取り組みを進めており、日本を含む一部の同盟国に天然ガスの融通が可能か検討するよう求めている。
バイデン大統領は先週行われた米独首脳会談の中で、ウクライナ侵攻が現実になれば、ロシアと欧州を結ぶ新たな天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」計画は頓挫すると警告していた。
NATOも15日の声明で、「ロシア軍の一部撤退が事実か否かを慎重に見極める必要がある」と述べた。
15日にロシアのラブロフ外相と電話会談を行ったブリンケン米国務長官は、「米国は検証可能で信頼できる緊張緩和を望んでいる」と述べた。
イギリスのボリス・ジョンソン首相は諜報機関の報告を引用し、「ウクライナ国境付近でロシア軍の野戦病院が建設されており、侵略の準備を進めているようにしか見えない」と懸念を表明した。
ウクライナはロシアの撤退発言に懐疑的な見方を示している。ドミトロ・クレバ外相は15日、「撤退をこの目で見るまで信じることはできない」と述べた。「ロシア軍は国境付近にとどまっています...」
NATOのストルテンベルグ事務総長も、「これまでのところ、ウクライナの国境付近にいるロシア軍が撤退する兆候は見られない」と述べ、NATOは部隊と兵器の「大幅かつ持続的な撤退」を望んでいると強調した。
一方、15日にウクライナ国防省、軍関連施設、銀行などを襲ったサイバー攻撃は比較的弱いもので、一部の専門家はより強力なサイバー攻撃の煙幕かもしれないと警告した。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は15日、新たなサイバー攻撃の脅威は報告されておらず、攻撃に関与した個人または組織は今のところ特定できていないと述べた。
西側諸国は侵攻の可能性を想定し、ウクライナの大使館職員や自国民に退避を呼びかけているが、ロシア国内で戦争を予想している人は少ないようである。
ウクライナ国境から約30キロの地点に位置するベルゴロド州の村では、ロシア軍の部隊が村の道路を頻繁に利用するようになっても、いつも通りの生活を送っている。
住民の男性はAP通信の取材に対し、「私たちはウクライナの友人です」と語った。「私の親戚は国境の向こうで暮らしています。私たちは戦争など起きないと信じています...」