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2008年以降に生まれた人への「たばこ」販売禁じる法案、まもなく成立 イギリス

この法案の最大の特徴は従来の年齢制限とは異なり「世代ごとに恒久的な禁止」を導入する点にある。
紙巻きタバコのイメージ(Getty Images)

イギリス議会は2008年以降に生まれた人々に対して生涯にわたり「たばこ」の購入を禁止する画期的な法案を可決し、成立まであと一歩の段階に入った。この「たばこ・電子たばこ禁止法案」は上下両院での審議を終え、国王の裁可を待つのみとなっており、正式に法律となる見通しである。

この法案の最大の特徴は従来の年齢制限とは異なり「世代ごとに恒久的な禁止」を導入する点にある。現在、イギリスでは18歳未満へのたばこ販売が禁止されているが、新制度では2027年以降、販売可能年齢が毎年1歳ずつ引き上げられる仕組みが導入される。これにより、2009年1月1日以降に生まれた人々は、将来にわたって合法的にイギリス国内でたばこを購入できなくなる。

政府はこの措置について、「スモークフリー世代」の実現を目的としていると説明している。イギリスの喫煙率は長期的に低下してきたものの、依然として数百万人が喫煙を続け、喫煙は予防可能な主要死因とされている。年間数万人規模の死亡や多額の医療費負担が問題となり、医療制度への圧力軽減も重要な狙いとなっている。

法案はたばこだけでなく、電子たばこやニコチン製品にも規制を広げる内容を含んでいる。具体的には、若年層への訴求を抑えるため、製品のフレーバーやパッケージ表示、広告などに対する規制権限が政府に与えられる。また、学校や病院周辺、遊び場などでの喫煙・電子たばこの使用制限も強化される見込みである。

この法案は2024年に提出されて以来、議会内外で大きな議論を呼んできた。支持派は「数十年後に喫煙をほぼ根絶できる可能性がある歴史的政策」と評価し、特に若者のニコチン依存を未然に防ぐ効果に期待を寄せている。一方で反対派からは、個人の選択の自由を制限する過度な規制であるとの批判や、過度な規制が闇市場の拡大を招く可能性への懸念も指摘されている。

電子たばこに関しては、禁煙の代替手段として活用する成人への影響を懸念する声もある。業界関係者の中には、規制強化がかえって従来の紙巻きたばこへの回帰や、規制外製品の利用を促す可能性があると警告する意見も出ている。

それでも政府は、この法案を長期的な公衆衛生政策の柱と位置づけている。喫煙開始年齢の多くが若年期に集中することから、そもそも「最初の一本」に手を出させないことが重要だとの考え方だ。段階的な年齢引き上げにより、既存の喫煙者には影響を与えず、新たな喫煙者の発生を防ぐ狙いがある。

このような世代単位での喫煙禁止政策は世界的にも例が少なく、かつてニュージーランドでも同様の制度が検討されたが、その後撤回された経緯がある。イギリスの取り組みは、実現すれば国際的にも先駆的な事例となり、他国の政策にも影響を与える可能性がある。

法案はチャールズ国王(King Charles III)の裁可を経て正式に成立した後、2027年から段階的に施行される見込みである。政府は今後、販売業者への年齢確認義務の強化や監視体制の整備、国民への周知などを進める方針だ。

今回の立法は喫煙という長年の社会問題に対する大胆なアプローチといえる。将来的に喫煙者そのものを社会から減少させることを目指すこの政策が、実際にどこまで効果を上げるのか、そして自由と規制のバランスをめぐる議論がどのように展開していくのかが注目される。

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