ロシア政府高官が沿ドニエストル問題に言及、モルドバへの圧力強化
沿ドニエストル(トランスニストリア)は旧ソ連崩壊前後の1992年の紛争を経てモルドバから分離し、現在も事実上の独立状態にある未承認地域である。
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ロシア政府がモルドバ東部の親ロシア派地域「沿ドニエストル」に住むロシア人の安全が脅かされていると警告し、状況次第ではあらゆる手段で保護に乗り出す可能性に言及した。ウクライナ情勢と連動する形で緊張が高まる中、同地域をめぐる対立が再び国際的な注目を集めている。
ショイグ(Sergei Shoigu)安全保障会議書記は21日、ロシア紙のインタビューで、同地域に居住する22万人以上のロシア市民の「利益と安全が危機にさらされている」と述べた。その原因として、モルドバ政府とウクライナの対応を挙げ、「必要であれば、憲法に基づき利用可能なあらゆる手段を講じる」と強調し、軍事的措置の可能性も排除しない姿勢を示した。
沿ドニエストル(トランスニストリア)は旧ソ連崩壊前後の1992年の紛争を経てモルドバから分離し、現在も事実上の独立状態にある未承認地域である。ロシアの支援を受けながら30年以上にわたり大きな衝突は回避されてきたが、近年はモルドバの親欧州路線の強化に伴い緊張が再燃している。
ショイグ氏はモルドバのサンドゥ(Maia Sandu)大統領が和平交渉を妨げていると批判し、地域住民が選挙や国民投票に参加する機会を制限していると主張した。さらに、モルドバがロシアの「平和維持部隊」指揮官の入国を拒否したことや、同地域に対する課税強化の動きを問題視し、状況悪化の要因と位置づけた。
一方、モルドバ側は沿ドニエストル問題を抱えたままでも欧州連合(EU)加盟を進める方針を崩していない。サンドゥ氏は2030年までの加盟を目標に掲げており、領土問題の未解決が統合プロセスの障害にはならないとの立場を示している。こうした姿勢はロシアとの対立を一層深める要因となっている。
直近では、モルドバと沿ドニエストルの協議が停滞し、双方が相手の対応を非難する状況が続く。ロシア兵約1500人の駐留問題や税制の適用拡大、エネルギー供給をめぐる摩擦など、複数の争点が絡み合っている。
さらに、ウクライナ戦争の影響も無視できない。ウクライナは国境を封鎖し、沿ドニエストルへの物流に影響を与えているほか、ロシア地域への影響力も変化している。これにより同地域は経済的・エネルギー的に不安定な状況に置かれ、政治的緊張と相まって不確実性が増している。
ロシア側は現時点で「最悪のシナリオ」を望んでいないとしつつも、「あらゆる可能性を検討している」と明言し、事態のエスカレーションへの懸念は拭えない。沿ドニエストルはウクライナと国境を接し、紛争の拡大や新たな軍事的緊張の火種となる可能性が指摘されている。
冷戦後に「凍結された紛争」とされてきたこの問題は、欧州の安全保障環境の変化とともに再び動き始めている。モルドバの欧州志向、ロシアの影響力維持、そしてウクライナ戦争という三つの要因が交錯する中で、沿ドニエストルをめぐる情勢は一層複雑化している。今後の外交交渉の行方と各国の対応が地域の安定に大きな影響を及ぼすとみられる。
