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国際刑事裁判所、フィリピン前大統領の釈放申し立て認めず

今回の判断はICCの上訴裁判部によるもので、弁護側が主張していた「ICCに管轄権がない」との訴えを退けた形である。
2021年9月15日/フィリピン、首都マニラの大統領宮殿、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領(Karl Alonzo/Malacanang Presidential Photographers Division/AP通信)

オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)は22日、フィリピンのドゥテルテ(Rodrigo Roa Duterte)前大統領の釈放を求める申し立てを退け、同氏の拘束継続と裁判手続きの維持を認めた。これにより、同氏が関与したとされる大規模な殺害事件を巡る審理は今後も継続される見通しとなった。

今回の判断はICCの上訴裁判部によるもので、弁護側が主張していた「ICCに管轄権がない」との訴えを退けた形である。弁護団はフィリピンが2018年にICCから脱退したことを理由に、同裁判所はフィリピンでの犯罪を裁く権限を持たないと主張していた。しかし判事たちはICCによる予備的調査が脱退前にすでに開始されていた点を重視し、その後も管轄権は維持されると判断した。

ドゥテルテ氏は2025年3月に逮捕され、以降ハーグのICC施設に拘束されている。今回の決定により、即時釈放の可能性は否定され、今後の審理に向けた手続きが続くことになる。同氏は出廷せず、判決は不在のまま読み上げられた。

問題となっているのは、ドゥテルテ政権下で行われた強硬な麻薬対策である。2016年から2022年にかけて行われた「麻薬戦争」では、警察や武装集団によって多数の容疑者が殺害され、人権侵害の疑いが国際的に指摘されてきた。ICCは同氏がこれらの殺害に関与し、いわゆる「死の部隊」を組織・支援したと主張している。

一方でドゥテルテ氏本人は一貫して容疑を否認。警察に対しては正当防衛の場合に限って武力行使を認めていたとし、違法な殺害を指示したことはないと主張している。また、弁護側は一連の訴追を「政治的動機によるもの」と批判してきた。

今回の決定を受け、フィリピン国内では被害者遺族らが歓喜の声を上げた。判決の様子を見守っていた遺族の間では歓声や拍手が起き、「誰も法の上には立てない」といった声が上がった。長年にわたり説明責任を求めてきた人々にとって、今回の判断は重要な前進と受け止められている。

ドゥテルテ氏は81歳と高齢で、健康状態や認知機能の低下も弁護側から指摘されているが、ICCはこれまでに審理に耐えうる状態にあると判断している。今後は起訴内容の正式確認を経て、本格的な公判に進むかどうかが焦点となる。

今回の決定は元国家元首であっても国際法の枠組みの下で責任を問われ得ることを改めて示すものとなった。同時に、国内での司法対応と国際刑事司法の関係、さらには国家主権と人権保護のバランスを巡る議論にも影響を与えるとみられる。ドゥテルテ氏の裁判の行方は、国際社会における説明責任の在り方を問う重要な試金石となっている。

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