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「東ドイツのベスパ」を選挙戦に活用、AfDが旧東独地域で支持拡大

シムソンは「東ドイツのベスパ」とも呼ばれ、ドイツ統一から35年以上が経過した現在も、旧東ドイツ地域で郷土意識を象徴する存在となっている。
2026年8月23日/ドイツ、ザクセン・アンハルト州、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のバイクミーティング(ロイター通信)

ドイツ東部ザクセン・アンハルト州で9月6日に州議会選挙を控える中、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が旧東ドイツを象徴する原付バイク「Simson(シムソン)」を選挙運動に取り入れている。8月23日には中世の街並みが残るクヴェトリンブルクで約5000人が参加するバイクイベントが開かれ、AfDの候補が青いシムソンに乗って隊列を先導した。

シムソンは「東ドイツのベスパ」とも呼ばれ、ドイツ統一から35年以上が経過した現在も、旧東ドイツ地域で郷土意識を象徴する存在となっている。AfDはこうした文化的記憶を政治的な訴えと結び付け、「東ドイツは不利な地域ではなく、ドイツ全体のモデルになるべきだ」と主張している。

AfD候補はイベントで、シムソンについて「個人の移動の自由」を象徴し、当時の人々が社会的につながっていた時代を思い起こさせるものだと語った。AfDはこうした世代を超えた「東ドイツの記憶」を若年層への訴求材料としている。

実際、AfDは若い有権者の間で支持を伸ばしている。2025年の連邦議会選挙を基にした分析では、ザクセン・アンハルト州の18~34歳のAfD支持率は2021年の25%から40%に上昇した。今回のイベントにも多くの若者がシムソンに乗って参加し、AfDがこうしたバイク愛好家の集会を開催することを歓迎した。

ただし、シムソンには複雑な歴史がある。同社は19世紀半ばにユダヤ人兄弟が設立した武器製造会社を起源とし、ナチスの台頭によって一族は国外へ逃れた。その後、東西ドイツ分断の中でオートバイや原付の製造に転じ、若者を中心に人気を集めた。現在米国に住む創業家の子孫は、AfDによるブランド利用を批判し、移民やLGBTQ+(性的少数者)などへの脅威を訴える同党とは関わりたくないとの立場を示している。

AfDのシムソン活用を巡っては反発も広がり、ブランドの評判を守るよう商標権者に求めるオンライン署名には約2万4000人が賛同した。イベント会場では約100人の反対派も抗議活動を行い、警察が支持者と分離する措置を取った。

今回の選挙戦は、単なる地方選挙にとどまらない意味を持つ。AfDがザクセン・アンハルト州で政権を獲得すれば、ナチス時代以降初めて極右政党が州レベルで単独の政権を担う可能性がある。

AfDは東部地域に残る経済格差や疎外感、世代を超えて受け継がれる旧東ドイツの記憶を結び付けながら支持拡大を狙っており、シムソンはその政治戦略を象徴する選挙運動の道具となっている。

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