◎亡命希望者たちはより良い生活を求めて危険な旅に出る。
ギリシャ沖、亡命希望者たち(Getty Images/AFP通信)

国営シリア・アラブ通信(SANA)は23日、亡命希望者を乗せたボートが西部タルトゥースの沖合で転覆し、少なくとも77人が死亡したと報じた。

SANAは保健省の声明を引用し、「レバノン人、シリア人、パレスチナ人を乗せたボートが21日に沈没した」と報じている。

保健省報道官によると、レバノン人の犠牲者の遺族が身元確認のためにシリアへの渡航を開始したという。

SANAは当局の声明を引用し、「20人が救助され、医療機関に搬送された」と報じた。

AP通信によると、医療機関に搬送された20人のうち8人はICUで治療を受けているという。犠牲者の身元は明らかにされていない。APは当局者の話を引用し、「77人の遺体が収容された」と報じている。

一部の地元メディアは少なくとも120人が乗船していたと報じており、行方不明者の数に食い違いが生じている。

レバノン政府は23日、「生存者はシリア人12人、レバノン人5人、パレスチナ人3人と報告を受けた」と発表した。報道官によると、23日未明にレバノン人8人の遺体がシリアから搬送されたという。

SANAは、「当局はレバノン人9人とパレスチナ人2人の遺体をレバノン国境で赤十字国際委員会(ICRC)に引き渡した」と報じている。

タルトゥースの政府高官は地元ラジオ局のインタビューで、「沿岸警備隊は行方不明者の捜索を続けている」と説明した。

SANAによると、31人の遺体が海岸に打ち上げられ、残り46人は22日夕方以降の捜索活動で収容されたという。

一方、レバノン軍は23日、首都トリポリ郊外に拠点を置く人身売買組織の事務所を急襲し、4人を逮捕したと報告した。また同軍は別の地域でも3人を逮捕したとしている。

同軍によると、7人は亡命希望者の不正入国を支援し、利益を上げていたという。

100万人以上のシリア難民を受け入れているレバノンは2019年後半から経済危機に見舞われ、通貨は暴落して紙くずになり、人口の4分の3以上が貧困ライン以下での生活を余儀なくされている。

レバノンは中東戦争や他の紛争で国を逃れた難民の受け入れ口になってきたが、同国を統治するイスラム過激派組織ヒズボラの数十年にわたる不作為・不正・汚職で経済はガタガタになり、2020年8月のベイルート港爆発事故で混乱は頂点に達した。

ハイパーインフレの結果、物価は高騰し、ここ数カ月で移民が激化した。多くの亡命希望者が持ち物を売って人身売買組織に代金を支払い、西欧を目指そうとしている。

今年4月にはイタリアを目指していたとみられるボートがトリポリ沖で沈没。レバノン人、シリア人、パレスチナ人など、数十人が死亡したと推定されている。

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