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シリア首都で旧アサド政権高官の裁判始まる、責任追及へ

被告はロシアに逃亡したアサド前大統領のいとこで元准将のアテフ・ナジブ。南部ダラアで政治保安部門の責任者を務め、2011年に反政府的な落書きをした少年らを拘束・拷問したとされる。
2026年4月26日/シリア、首都ダマスカスの裁判所(AP通信)

シリアで旧アサド政権関係者を裁く初の公開裁判が4月26日、首都ダマスカスで始まった。長年にわたる内戦と権力崩壊を経て、過去の人権侵害に対する責任追及を本格化させる象徴的な動きとなる。

被告はロシアに逃亡したアサド(Bashar al-Assad)前大統領のいとこで元准将のアテフ・ナジブ(Atef Najib)。南部ダラアで政治保安部門の責任者を務め、2011年に反政府的な落書きをした少年らを拘束・拷問したとされる。この事件は抗議デモの拡大を招き、後に14年に及ぶ内戦へと発展する契機となった 。

裁判は「シリア国民に対する犯罪」と題され、初回審理は手続き中心に進められた。今後は証拠提出や証人尋問など本格審理に入る見通しで、次回審理は後日設定される。法廷には市民や被害者遺族、活動家らが集まり、歴史的な裁きの開始を見守った。

今回の裁判は2024年にアサド政権が崩壊し、アサドがロシアへ逃れた後の政治体制下で進められている。シャラア暫定政権は内戦期に発生した拷問や超法規的殺害などの責任を追及する「移行期正義」を掲げ、司法による清算を国家再建の柱の一つに位置付けている。

また、アサド本人や弟マーヘル・アサド(Maher al-Assad)ら政権中枢も拷問や殺害、汚職などの罪で欠席のまま起訴されている。さらに、虐殺に関与したとされる元情報将校の拘束なども相次ぎ、旧体制の責任追及が拡大している。

ただし、課題も少なくない。長期内戦で司法制度が弱体化し、公正な裁判の実現や証拠の確保、関係者の安全確保など、多くの障害が指摘されている。また、一部の旧政権関係者が免責措置を受けているとの報道もあり、真の責任追及に対する懸念も根強い。

それでも今回の公判は、数十万人の死者と数百万人の難民を生んだ内戦の記憶に対し、国家として初めて向き合う試みといえる。被害者にとっては長年求めてきた正義への一歩であり、社会の和解と再建に向けた試金石でもある。

今後、どこまで広範な責任追及が実現するのか、また司法手続きが国際的な信頼を得られる形で進むのかが問われる。シリアが戦後の混乱から法の支配へと移行できるかどうかは、この裁判の行方に大きく左右されることになる。

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