シリア上空を通過する航空機急増、イラン戦争で思わぬ恩恵
運輸省の民間航空総局によると、2026年5月に同国の空域を通過した航空機は1万1801便に達した。
.jpg)
中東情勢の緊迫化によって航空路線の再編が進む中、長年にわたり国際航空網から敬遠されてきたシリアが思わぬ経済的恩恵を受けている。イラン戦争の影響で周辺空域が不安定化した結果、多くの航空会社がシリア上空を利用するようになり、同国は通過料収入の大幅な増加を見込んでいる。
運輸省の民間航空総局によると、2026年5月に同国の空域を通過した航空機は1万1801便に達した。これは戦争による航空網の混乱が本格化する前の2月の4267便を大きく上回り、前年同月比では約375%増となった。航空業界関係者は「中東の空の地図が大きく塗り替えられた」と指摘している。
今回の変化の背景には、2月末に始まった軍事衝突がある。米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けて地域の安全保障環境が悪化し、イラクやペルシャ湾周辺の空域が一時閉鎖された。欧州とアジアを結ぶ主要ルートが利用できなくなったため、多くの航空会社は代替経路を模索し、結果としてシリア上空の利用が急増した。
シリア経由の飛行には経済的な利点もある。イラク上空を迂回するより飛行距離を短縮できるため、燃料消費を抑えられる。原油価格の高騰によって航空会社のコスト負担が増す中、運航効率の改善は重要な課題となっている。
シリア暫定政権は今年、航空機の上空通過料を1便当たり499ドルに設定した。ロイター通信の試算によると、5月だけで最大590万ドルの収入を得た可能性がある。内戦で疲弊した経済の再建を進める同国にとって、貴重な外貨獲得源となる見通しだ。
もっとも、安全性への懸念は依然として残る。シリアは2024年末の政変によって14年に及ぶ内戦に終止符を打ったが、国際的な航空機関はなお同国空域を高リスク地域に分類している。欧米の大手航空会社の多くは利用に慎重な姿勢を維持しており、主に湾岸諸国の航空会社がシリア経由の運航を拡大している。
一方、シリアは空域利用の拡大を追い風に航空インフラの近代化も進めている。トルコから供与された新型レーダーや航法システムの導入により、管制能力の向上を図ってきた。地域紛争が生み出した航空路線の変化は、かつて「飛行禁止空域」と見なされていたシリアに予想外の経済的好機をもたらしているが、その恩恵が長期的に続くかどうかは中東情勢の行方に左右されそうだ。
