◎各国の交渉担当者は「理想を口にするのは簡単だが、それを実行に移すのはとても難しい」という現実に直面した。
2021年9月26日/インド、ジャールカンド州東部の石炭工場(Getty Images/AFP通信/EPA通信)

11月13日、グラスゴーCOP26国連気候サミットは石炭火力の段階的な削減を含む新たな目標を採択し、無事閉幕した。

一部の気候専門家は決議に深刻な懸念を表明し、スウェーデンの気候活動家であるグレタ・トゥーンベリ氏はCOP26を「Blah blah blah」と非難した。blah blah blah(ブラブラブラ)は中身がないという意味。

各国の交渉担当者は「理想を口にするのは簡単だが、それを実行に移すのはとても難しい」という現実に直面した。

開催国のイギリスと気候変動の影響を強く受けている貧しい国々は決議案に「石炭火力の段階的な廃止」という強い文言を書き込もうとしたが、石炭火力に依存している国々の反発に直面し、書き直しを余儀なくされた。

国内の電力供給の50%以上を石炭火力でまかなっているインドや中国は段階的な廃止という文言を却下し、気候活動家の願いを打ち砕いた。中国は現在、1,058基の石炭火力発電所を国内で運用している。これは世界の運用基数の50%以上を占める。

石炭に焦点を合わせる理由

世界の主要な電力供給源である石油、石炭、天然ガスの中で最も温室効果ガスを排出する化石燃料が石炭である。石炭は世界の温室効果ガス排出量の約20%を占めている。

しかし、石炭は比較的安価で入手しやすく、成長著しいインドを含む新興国に欠かせない化石燃料であり、少なくとも今後数十年は世界中で使用され続けると信じられている。

石炭の燃焼は光化学スモッグ、酸性雨、呼吸器疾患の原因となる大気汚染を引き起こす。

石炭に依存している国

世界最大の石炭消費国は製造業の巨人中国で、インドと米国がそれに続く。

国際エネルギー機関(IEA)によると、中国の石炭火力発電所は2019年に約4,900テラWh(4.9兆kWh)の電力を発電したという。これは、中国を除く世界の火力発電が発電した電力量とほぼ同じである。

ただし、一人当たりの石炭火力発電量1位はオーストラリアであり、次点は韓国、以下南アフリカ、米国、中国が続く。

石炭火力から卒業できない理由

石炭は安く、比較的簡単に手に入る。

再生可能エネルギーの価格競争力が高まったとしても、石炭を打ち負かすことは極めて難しいと考えられている。

電力需要は人口の急増と文明の発展に比例する形で急増しており、再生可能エネルギーだけでそれをすべてまかなうことは困難である。ただし、人口の少ない国は対応できる可能性が高い。アイスランドの電力は100%再エネである。

IEAのレポートによると、インドは今後20年の電力需要の伸びに対応するためには、EU加盟国の全発電施設と同規模の施設を新たに建設する必要があるという。

なお、世界の電力部門における石炭火力の割合は、過去50年間ほとんど変化していない。IEAによると、1973年の割合は38%、2019年は37%だった。

COP26における石炭関連の合意

気候変動の影響を強く受けている貧しい国々および島国は、石炭火力の段階的な廃止を求めていたが、先述の通り、「段階的な削減」に向けて努力するという文言に変更された。

また、具体的な削減目標とタイムラインは明記されておらず、トゥーンベリ氏に「blah blah blah」と非難された。

石炭依存から抜け出せますか?

オーストリア、ベルギー、スウェーデンは最後の石炭火力発電所を閉鎖している。

イギリスは2024年までに国内の石炭火力をすべて廃止する予定である。ただし、一部の保守派は雇用の問題を含む課題に懸念を表明している。

米国は天然ガスへの移行を進めつつあったにもかかわらず、進行中の化石燃料価格の高騰に伴い、今年の石炭火力発電量は大きく増加した。

日本は火力発電所をすべて廃止するのではなく、その技術を高めCO2の排出量を減らしたうえで2050年までにカーボンニュートラルを達成するとCOP26で宣言し、化石賞を受賞した。

エネルギー・クリーンエア研究センターによると、世界で建設が進められている新たな石炭火力発電所のうち、370基がまもなく運用を開始する予定だという。

2021年5月21日/中国、内モンゴル自治区の石炭火力発電所(ロイター通信)
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