◎ミツバチたちは果樹園に入り、農薬を塗布された花に触れ、死ぬ。
2021年1月17日/チリ、首都サンティアゴの郊外にある養蜂場のミツバチ(Getty Images/AFP通信)

チリでは10年以上雨の少ない状態が続いており、養蜂場のミツバチに欠かせない花が少なくなっている。

首都サンティアゴの郊外で養蜂場を営んでいるペラルタ氏は昨年11月から300の巣箱を失い、残った900箱を花の多い場所に移すかどうか悩んでいる。

ペラルタ氏はAP通信の取材に対し、「ミツバチが死ねば私たちも死ぬ」と語った。

ミツバチは野生植物と商業植物の両方に受粉し、チリの主要輸出品のひとつである果物の生育でも重要な役目を担っている。

ペラルタ氏は約1,000km離れた町に移転する予定である。

国連食糧農業機関(FAO)の生物多様性地域専門家であるゴンサレス博士はミツバチを含む送粉者の減少について、「農薬や肥料の使用、単一栽培、気候変動による干ばつ、水資源の不適切な管理などが関係している」と指摘している。

これらの要因は世界のミツバチに打撃を与えている。チリでは過去4、5年の間に蜂蜜の輸出が激減した。コロナの感染拡大も危機に拍車をかけている。

2018年にFAOが行った調査によると、チリの農薬の輸入量は過去20年間で460%増加したという。養蜂家たちは農薬がミツバチの減少の主要因と指摘している。

ペラルタ氏は、「ミツバチたちは果樹園に入り、農薬を塗布された花に触れ、死ぬ」と語った。

ペラルタ氏の弟であるマルコ氏は「ミツバチに砂糖水と他の栄養素を加えた代替餌を与えているが、蜂蜜はできない」と述べた。「花の蜜の代わりに代替餌を与えていますが、ミツバチは確実に弱っています。人間が毎日ジャンクフードを食べているようなものです...」

チリ養蜂家協会のサルミエント会長はAP通信のインタビューの中で、「栄養失調の子供にお菓子を与えているようなもの」と例えた。「ミツバチには自然な環境で育った花が必要です...」

養蜂家たちは干ばつが深刻化する前も花が少なくなる冬の間は代替餌を使うことがあったが、今ではほぼ1年、代替餌に頼っている。

FAOのゴンサレス博士によると、代替餌にはミツバチの体や神経系の発達に必要なタンパク質が不足しており、病気にかかりやすくなるという。

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