ケノーシャツアー

以前、ドナルド・トランプ大統領は人々を見境なく撃つ警察官を、「ゴルファーがチョークホールドするようなもの」と例えていた。

9月1日、トランプ大統領はウィスコンシン州ケノーシャで被害を受けた街や施設を視察し、法執行機関と共に会見を行った。

先日、トランプ大統領はケノーシャの民主党市長に「バカ」というニックネームを授け、「急進的なアナリストに立ち向かい、混乱を拡大させた」と厳しく非難した。

また、州兵および連邦捜査局(FBI)がケノーシャで活動していなければ、「街は灰になっていただろう」と語った。

ウィスコンシン州ケノーシャでは、黒人のジェイコブ・ブレイク氏が無抵抗状態にも関わらず、背後から7発もの銃弾を撃ち込まれ、以来、平和的な抗議活動だけでなく暴力も続いている

トランプ大統領によるケノーシャツアーは、同州民主党のトニー・エバーズ州知事および、ジョン・アンタラミアン市長に拒否されていたが、無事敢行するに至った。

今回のケノーシャツアーには、ビル・バー司法長官と国土安全保障長官のチャド・ウルフ氏が同行している。担当者によると、トランプ大統領は空港から市内、そして緊急オペレーションセンターを開設した地元の高校を視察し、支持者と抗議者の集団に迎えられたという。

ウィスコンシン州はトランプ大統領再選のカギを握る可能性がある。また、11月の大統領選挙に先立ち、「強力な法と秩序」を呼びかけ、今回のケノーシャツアーもそれを前面に押し出す作戦のひとつと考えられている。

現地を視察したトランプ大統領は記者団に対し以下のように述べた。

ドナルド・トランプ大統領:
「多くの住人が、ケノーシャを運営する民主党政権にウンザリしている。民主党市長は街の現状を見て自分の愚かさを痛感しなければならない」

「住人たちは、なぜ、自分たちの街が燃やされねばならないのか、と困惑している。私も困惑しているし、信じられない気持ちだ。ウィスコンシン州を民主党に任せたのが間違いだった。」

その後、トランプ大統領はケノーシャに州兵を派遣したと主張。しかし、指示を出したのはトニー・エバーズ州知事であり、大統領はFBI捜査官200名にバックアップ任務を指示しただけである。

トランプ大統領は、抗議者がアンタラミアン市長宅への侵入を試みた、という報告を引用した。

ドナルド・トランプ大統領:
「私は昨夜、過激なアナキストたちが市長の自宅に押し入ろうとしているところを見た。この貧しく愚かなバカ、非常に愚かな”バカ市長”に多くの災難が降りかかっている。私は、なぜ彼が市長に選ばれたのか理解できない」

「過激なアナキストたちは、善良な住人たちに嫌がらせを繰り返している。そして、また市長の自宅に押し入ろうとするだろう。しかし、愚かなバカ市長は相変わらずアナキストたちに寄り添っている」

なお、アナキストたちがアンタラミアン市長宅に押し入ったという事実は確認されていない

トランプ大統領は「州兵と警察で働く職員のために」ケノーシャツアーを敢行したと語り、「彼らは素晴らしい仕事をした。街に放たれた火をすぐに消し止めた」と付け加えた。

先週末、バカ呼ばわりされているアンタラミアン市長はトランプ大統領のケノーシャツアーについて、「時期が悪い」と主張していた。

市長はナショナル・パブリック・ラジオの取材に対し、「現実的に考えると、今、この時期にトランプ大統領が来ることを私たちは望んでいない」と語った。

またウィスコンシン州のエバーズ州知事は、「トランプ大統領の来訪は、私たちの癒しを妨げるだろう」と警告していた。

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ケノーシャに降臨したトランプ大統領

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ブレイク氏との会合

トランプ大統領はワシントンD.C.を発つ際、以下のように述べた。

ドナルド・トランプ大統領:
「現地に到着したら、ケノーシャ警察とFBIに挨拶するつもりだ」

「私がウィスコンシン州を視察する理由は、ケノーシャでの治安維持活動が成功したためだ。私が送りんだ州兵、警察、そしてFBIは素晴らしい仕事をした」

なお、ジェイコブ・ブレイク氏の家族と面談するか否かはまだ決まっていないという。トランプ大統領は記者団に対し、「ジェイコブの家族に会うか否かはまだ分からないし、知らない。視察時間は限られているため、決断を下すつもりだ。ただし、現時点では分からない」と述べた。

今回、トランプ大統領は、人種差別抗議運動の最新ホットスポットへの弾丸ツアーを敢行。州知事は視察を拒否したものの、その要望はさらに拒否された。

また、トランプ大統領はお抱えのエアフォースワンでウィスコンシン州に向かうため、第三者との社会的距離の確保およびマスク着用に興味はないようだった。

トランプ大統領は記者団の前に堂々と立ちふさがった時も、マスクを着用しなかった。

共和党はケノーシャに配備された州兵、警察、FBIの活躍を賞賛し、彼らが住人の命と平和を守ったと主張。これに対し民主党は、トランプ大統領が騒乱の火に燃料を投下している、と非難した。

トランプ大統領は反人種差別に抗議する者の不満ではなく、いくつかの暴力行為に焦点を合わせてきた。そして、警察官の残虐行為の終了および法の見直しを要求する人々に対し、FBI捜査官を送り付けた。

ブレイク氏の父親は、トランプ大統領を人種差別主義者と呼び、「彼と話すことはない」と述べている。ただし、大統領は会談の可能性を除外しなかった。

ブレイク氏の父親はBBCの取材に対し、「アフリカ系アメリカ人やヒスパニック系アメリカ人も犯罪行為に反対しており、トランプ大統領の言う”法と秩序を守る”ことは当然の義務だと思っている。しかし、彼のメッセージは人種間の溝を深め、差別を助長しているだけだ」と述べた。

トランプ大統領は人種差別への抗議活動中に発生した破壊行為の現実をメディアと共に視察し、警察管との円卓会議を開催することで、強力な法と秩序の必要性をあらためて説き、再選キャンペーンに結び付けたいと考えている。

ケノーシャで発生した人種と暴力を巡る論争は、両大統領候補のウィークポイントになる可能性が極めて高く、選挙結果を左右する新たな震源地になったと言っても過言ではない。

ブレイク氏の父親はCNNの取材に対し、「息子の人生はトランプ大統領との会談よりはるかに大切である」と述べた。

ジェイコブ・ブレイク氏の父親:
「私は政治に参加する権利を持っていない。これは私たち家族の問題である。トランプ大統領との写真撮影に興味はない

「息子は腰から下がまだ麻痺している。しかし、一番大切な命はとりとめた」

「息子は数週間前まで自分の足で子供たちと一緒に走り回っていた。私は大切な息子の人生が壊されたことに対し、ただ正義を求めているだけである」

ブレイク氏(29歳)は3人の子供が座っている後部座席を運転席から覗き込んだ際、背後から致命的な銃弾を浴び、倒れた。

ウィスコンシン州司法省は、ブレイク氏を背後から銃撃したラステン・シェスキー氏と他の警察官2名の情報をほとんど公表していない。

シェスキー氏は2013年からケノーシャ警察に勤務していた。

2019年8月、ケノーシャニュースのインタビューを受けたシェスキー氏は、「祖父は33年警察官として働いた。私は法執行官として街の治安を守りたいと思っていた」と述べている。

AP通信は、ウィスコンシン州の公開記録法に基づき、州司法省とケノーシャ警察署の両方にシェスキー氏の勤務記録提出を要求した。なお、記録が提出されるまでにかかる期間は、通常数週間から数カ月である。

トランプ大統領の支持者と抗議者が激突

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