驚異的な熱波にさらされる北極圏

20日、シベリアのベルホヤンスク(ロシア連邦極東、サハ共和国)の最高気温が38℃(100.40℉)に達し、北極圏における史上最高記録を更新した。

世界一寒い秘境の村と言われてきたベルホヤンスクは、近年酷暑にさらされてきた。専門家は、「同月の日平均気温(最高)より18℃も高くなるなど想像もできない」と危機感をあらわにした。

北極圏の夏の暑さは決して珍しいものではなく、ここ数年、特に今年の数カ月間は異常な高温を記録している。同地域の温暖化は世界平均の約2倍(過去30年間)で進行し、ほとんどの科学者がその事実を認めている。

約1,300人が暮らすベルホヤンスクは、サハ共和国の首都ヤクーツクから北北東へ約675km、ヤナ川河畔の北極圏内に位置する。極端な気候が特徴で、1月の平均気温はー40℃付近、それが6月には20℃前後まで上昇する。

気象学者たちは、北極圏で発生した持続的な熱波に危機感を募らせている。コペルニクス気候変動サービスの調査によると、2020年3月~5月の平均気温はこれまでより10℃高かったことが分かったという。

6月初め、シベリアの一部地域で最高気温30℃を記録した。また5月には、北極圏の北72度、ロシアで最も北に位置する農村地域のひとつ、ハタンガで最高気温25.4℃を記録した。

ブリストル大学、大気科学の准教授を務めるダン・ミッチェル博士はBBCの取材に対し、「今年の持続的な熱波を見れば、北極圏の記録が更新されるのは当然である。近い将来、住人と動植物はさらに驚異的な暑さを体感するだろう」と述べた。

2000年代に入り、「北極圏=極寒」というイメージは完全に崩れ去ってしまった(真冬は当然寒いのだが)。地球の表面温度調整センサーが数十年前に比べると明らかにおかしい、異常をきたしていると言わざるを得ない。

ここ数カ月、持続的かつ圧倒的な熱波がロシア東部を支配した。さらに、熱帯エリアから暖かく湿った空気がもたらされ、平均気温はみるみる上昇。38℃という亜熱帯地方も面食らう最高気温を記録したのである。

驚異的な暑さをもたらす気候パターンが長期間持続することで、北極圏一帯は高温にさらされ続ける。気象学者はこの現象が”気候変動”とともに発生すると予想し、現実になった。

世界の平均気温は1960年~2019年の間でおおむね1℃ほど上昇している。しかし、気温の上昇は北極圏に近づくほど悪化し、最もひどい地点では、60年間で約4℃も上昇した。

スポンサーリンク

北極圏の異常気象は温暖化の証拠?

北極圏の気温が大幅に上昇することで、氷山の奥深くに封印された「永久凍土」の融解が加速している。これが溶けると、内部および地下に閉じ込められていた二酸化炭素とメタンガスが大気に放出されてしまうのだ。

雄大な自然から大量放出される温室効果ガスの影響で、地球温暖化はさらに悪化。「温暖化→ガス放出→温暖化→ガス放出」という加算方式(ポジティブフィードバック)によって永久凍土の融解が進み、北極圏は亜熱帯地域に負けない酷暑にさらされるのである。

BBCウェザーの調査によると、「反射率の高い北極圏の氷が失われると、地面と海がより多くの熱(太陽光)を吸収する。温室効果ガスだけでなく、地球に恵みをもたらす太陽光までもが温暖化を促してしまう」と述べた。

氷の融解に伴い地肌が露出、山火事の危険性も増す。昨年夏に発生した大規模な山火事は、北極圏の雄大な自然を焼け野原に変えた。「気温の上昇と、それによってもたらされる強風が被害を拡大させた」と専門家は言う。

これまでのシベリアは、5月上旬頃から少しずつ暑くなり、7月~8月頃に気温のピークを迎えることがほとんどだった。しかし、今年は4月下旬から一気に暑くなり、ロシア連邦シベリア中部の都市、クラスノヤルスクでは例年の数倍厳しい酷暑を迎えているという。

ロンドン大学ユニバーシティカレッジのクリス・ラプリ教授はBBCの取材に対し、「私たちは地球のエネルギーバランスを混乱させてきた。今起きている異常気象は、地球が発するメッセージである。それを無視すれば、さらなる危機を招くだろう」と警告した。

2019年の夏、シベリア、アラスカ、グリーンランド、カナダの北極圏地域が炎とスモッグに包まれた。これにより膨大な量の緑が失われ、大量の二酸化炭素が大気中に放出された。

特に被害の大きかった地域は、ロシア東部とアラスカ。ロシアの連邦森林局の調査によると、東部地域だけで270万ヘクタール以上の森林が消失した。

大量のスモッグ発生に伴い、プーチン政権は緊急事態宣言を発動。ロシア連邦・シベリアの中心都市、ノヴォシビルスクなどがスモッグに支配され、太陽を奪われた。

山火事は地球の表面を焼くだけでなく、有害な汚染物質と有毒ガスも排出する。NASAの科学者は、大気中に放出された”すず”が太陽光を吸収し、大気を温めると述べた。さらに灰色の物質が氷河や雪の表面を覆うと、反射率の低下を招く。結果、地面により多くの熱が閉じ込められ、温暖化プロセスを加速させてしまうのである。

2020年、コロナウイルスの影響に伴い、人類の経済活動は著しく低下。車や工場の稼働減少により地球の大気はキレイになった、ように思われた。しかし、100年以上に渡って積み重ねてきた温暖化促進行為が、わずか数カ月の休暇で改善されるわけもない。

北極圏の驚異的な気温上昇を放置してはならない。事実から目を背け対策を怠ってしまえば、我々はこれまで経験したことのない気温の上昇、異常気象、海面上昇などに直面するだろう。

スポンサーリンク