条件を満たした国との国境を開放する

EUは、7月1日から加盟国間(一部を除く)の国境を開放する。これに伴い、原則検疫手続きなしで加盟国間を移動できるようになる。また、加盟国以外においては、コロナウイルスを封じ込めつつある14ヵ国に限り、開放する予定。なお、アメリカ、ブラジル、中国は除外された。

EUが安全と認めた国は以下の14ヵ国である。ただし、対象国の感染状況が7月1日以降に悪化すれば、入国禁止措置を再発動する可能性あり。

【対象国と感染状況/ジョンズ・ホプキンズ大学まとめ】

対象国累計感染者数累計死者数入国時の検疫有無
(7月1日以降)
アルジェリア13,571905
オーストラリア7,765104
カナダ104,0008,566
ジョージア92615
日本18,476972
モンテネグロ50111
モロッコ12,290225
ニュ―ジーランド1,17822
ルワンダ1,0012
セルビア14,288274
韓国12,800282
タイ3,16958
チュニジア1,17250
ウルグアイ93227

EU外交官によると、中国政府がEUからの入国を同様の条件で認める場合、15か国目として認める準備が整っているという。

ホリデーシーズン到来に伴い、観光客の受け入れ態勢は徐々に整いつつある。ただし、コロナウイルスの発生以前の体制に戻すのではなく、入国後も社会的距離の確保や国によって異なるマスク着用ルールを遵守しなければならない。

2020年12月31日付でEU離脱移行期間終了を迎えるイギリスも、現時点では加盟国と見なされている。なお、イギリス政府は独自に制定した”英国旅行検疫規則”に伴う「入国時の検疫免除(エアブリッジ)」を対象各国と協議している。

エアブリッジは、コロナウイルスの感染状況が比較的低い2か国間で締結、検疫なしでの入国を可能にするものである。双方同意のうえで検疫の有無を決定するため、片方の感染状況が悪化すれば、関係は解消、再び入国制限が課されることになる。

EUが示した国境開放リストは、30日正午に最終版が公開される予定である。

EU加盟国以外の「どの国」を安全と見なすかについては、政治的問題等も考慮しつつも、感染の比較的落ち着いている国ばかりが選ばれている。

ドイツやイギリス、スペインなどは安全に主眼を置き、優れた医療サービスと信頼できる感染データを提供する国のみ対象リストに加えるよう求めていた。

一方、観光業や旅行業を主力産業とする国は、できる限りたくさんの観光客を呼び込みたいと考え、リストのチェック項目緩和を望んでいた。

また、対象外の国との外交関係にも注視しなければならない。アメリカ、中国との国境開放が最大の争点になるだろう。ただし、中国は徹底したロックダウンでウイルスの封じ込めに成功しており、双方がエアブリッジを認めれば、開放はスムーズに進むものと思われる。

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アメリカとブラジルは入国お断り

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、アメリカの累計感染者数は約264万人、128,000人以上が死亡した。ブラジルの累計感染者数は約137万人、58,385人の死亡が確認されている。なお、世界の累計感染者数は1,000万人突破した。

アメリカ国内においては、ロックダウンをいち早く緩和した南部および西部で感染拡大が広がっている。南部アリゾナ州はロックダウンの緩和を停止。保守系のダグ・デューシー共和党州知事は、バー、ナイトクラブ、ジム、映画館、ウォーターパークの閉鎖を命じ、50人以上の集会を禁止すると発表した。

同州の再ロックダウン指令は、少なくとも7月27日まで適用されるという。デューシー共和党州知事は記者団に対し、「1日当たりの感染者数がこのまま増加すれば、医療システムはパンクする。我々は元の生活に戻るべきでない」と述べた。

同州のロックダウンは、ホワイトハウスの設定した基準に則り、5月中旬頃から段階的に緩和されていた。

同じく南部テキサス州とフロリダ州の共和党州知事も、26日金曜日からビジネスの再開にブレーキをかけた。感染者数が爆発的に増加し、24時間当たりの新規感染数が連日記録を更新し続けたため、再ロックダウン指令を発動せざるを得なかった。

カンザス州とオレゴン州は、公共エリアでのマスク着用義務化を要求しているものの、反対派から「強制は民主主義の道義に反する」と猛反発を受け、議会および州知事は難しい舵取りを迫られている。

8月にトランプキャンペーンを予定しているフロリダ州ジャクソンビル市は、公共施設および屋内でのマスク着用義務化を発表した。これに伴い、トランプキャンペーンの出席者およびトランプ大統領本人も、マスクを着用しなければ違反者と見なされることになった。

人口4,000万人の巨大都市カリフォルニア州でも感染が拡大している。当局は独立記念日(7月4日)に州内で予定していた花火大会を全て中止したうえで、ビーチの閉鎖も決めた。

29日、感染予防対策を徹底している東部ニュージャージー州は、住人が社会的距離のガイドラインを無視し、マスクを着用していなかったため、屋内ダイニングの再開を延期すると発表した。

ニューヨーク州はパンデミックが始まって以来、入院患者数および死亡者が最も少なくなったと発表。アンドリュー・クオモ民主党州知事は、「先日の24時間当たりの死者数は8人だった。しかし、今、焦って感染予防対策を緩めるべきではない。ロックダウンの段階的な緩和は、第二波に備えつつ慎重に進めていく」と述べた。

一方、ラテンアメリカのホットスポット、ブラジルは、ボルソナロ大統領の奨励する予防対策が功を奏さず、感染拡大の勢いは一向に衰えない。公式発表の新規感染者数は上下動を繰り返しているものの、大都市圏を除く地域ではPCR検査自体が行われておらず、政府の発表する数字は意味のないものになってしまった。

専門家は、ブラジルのピークを数週間もしくは数カ月先と予想している。アメリカおよびブラジルと最初にエアブリッジを結ぶ国はどこになるだろうか?

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