◎イスラム国の戦闘員は1月20日の深夜にグワイラン刑務所に侵入したと伝えられている。
1月26日、シリアの現地メディアによると、クルド人民兵組織はイスラム国(ISIS)に占領された北東部ハサカの刑務所の支配権を取り戻したという。
米国の支援を受けるシリア民主軍(SDF)のシャミ報道官は26日、「ハサカのグワイラン刑務所を占領したテロリストは降伏した」とツイートした。
シャミ報道官によると、奪還作戦は2日前に始まり、ISISに加担した刑務所の囚人約2,000人が降伏し、作戦中にSDFの兵士少なくとも35人が死亡したという。
別のクルド人当局者はAP通信の取材に対し、「テロリストは刑務所および近くの仮設収容所にいた子供数百人を”人間の盾”として利用した」と明らかにした。
グワイラン刑務所(収容所)は約600人の未成年を含む3,000人以上の囚人を収容している。囚人はISISやアルカイダを含むジハード組織の戦闘員、シリア内戦に関与した約20カ国の外国人などで構成されている。
イギリスに本拠を置くシリア人権監視団は26日の声明で、「刑務所から周辺の仮設住宅地に広がった1週間にわたる激しい攻防で、これまでにISISの戦闘員124人、クルド人民兵50人、民間人7人の死亡が確認された」と報告した。
SDFを含むクルド人組織はシリアの北部と東部の仮設収容所に男性と少年を約12,000人、女性と女児約60,000人を収容している。
ISISの戦闘員は1月20日の深夜にグワイラン刑務所に侵入したと伝えられている。SDFによると、戦闘員は爆発物を使って刑務所の外壁に穴をあけ、仲間のジハード主義者を解放したという。
米国主導の多国籍軍はSDFとその他のクルド人民兵団を戦闘機、戦車、装甲車、ヘリコプターで支援し、グワイラン刑務所を包囲した。
SDFのシャミ報道官は、「拘束されていたグワイラン刑務所の職員23人を解放し、26日午後の時点で刑務所内に立てこもったISISの戦闘員1,000人以上と囚人少なくとも2,000人が降伏した」と述べた。
ユニセフは25日遅くに「刑務所に閉じ込められた子供たちの安否を懸念している」と声明を発表し、すべての関係者に子供たちの安全を確保し避難させるよう求めていた。
一部の人質は刑務所内で子供の遺体を見たという音声メッセージを現地メディアに送り、「食料と水が明らかに不足している」と警告していた。
人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチのシリア担当者は、刑務所に収容されていた18歳の米国人およびカナダ人とツイッターで連絡を取り合っていた。担当者によると、2人は15~20人の子供が殺された可能性があるとツイートしたという。
ユニセフは声明の中で、「グワイラン刑務所には12歳以下の子供が数百人収容されており、そのほとんどが公正な手続きを受けることなく拘留されている」と述べ、シリア政府に対応を改めるよう要請した。子供の大半はシリアまたはイラク人と伝えられている。
ユニセフは「子供たちを母国に戻す時が来た」と述べ、国際社会に支援を呼びかけた。
現地の多国籍軍を統括する米軍のジョン・ブレナン少佐は「SDFの勇気と決意」を称賛したうえで、グワイラン刑務所や他の仮設収容所で進行中の問題(人権侵害、食料不足、ISISの台頭など)に対処する必要があると警告した。「これらの問題を解決するためには、国際社会が団結してシリアに長期的な解決策と支援を提供しなければなりません...」
報道によると、戦闘中に刑務所から脱獄した囚人の数は明らかにされていないという。ISISは25日に800人を解放したと主張したが、SDFは大半を拘束したと述べ、ISISの主張を否定している。