◎ベラルーシ当局は、ギリシャからリトアニアに向けて飛行していた英ライアンエアーのFR4978便をミンスクの空港に強制着陸させ、反ルカシェンコ派のラマン・プロタセビッチ氏を逮捕した。
5月24日、西側諸国はベラルーシの独裁者、リトル・プーチンことアレクサンドル・ルカシェンコ大統領を厳しく非難した。
英ライアンエアーは23日、「ベラルーシ当局は領空内に入ったFR4978便は爆弾の脅威にさらされていると主張し、首都ミンスクの空港に着陸するよう命じた」と述べた。
ベラルーシを四半世紀以上にわたった鉄の拳で統治してきたルカシェンコ大統領はMiG-29戦闘機に出撃を命じ、FR4978便をミンスクの空港に強制着陸させ、搭乗客のラマン・プロタセビッチ氏を逮捕した。ギリシャからリトアニアに向けて飛行していたFR4978便はミンスクで数時間待機を余儀なくされたが、その後離陸を許可された。
現地メディアによると、プロタセビッチ氏とロシアのガールフレンドは着陸後に飛行機から連行され、どこかに移送されたという。ベラルーシ当局は2人の行方を明らかにしていない。
プロタセビッチ氏はテレグラムメッセージングアプリのNextaメディアネットワークの共同創設者であり、反ルカシェンコ派の活動を組織化するうえで重要な役割を果たしてきた。
リトアニアで事件の調査を指揮している刑事警察局長のローランド・キスキス氏によると、ギリシャでFR4978便に搭乗した乗客126人のうち、ピリニュスに到着したのは121人だったという。
ライアンエアーのマイケル・オライリーCEOは現地メディアのインタビューの中で、事件を「国家が後援するハイジャック」と呼び、「首都ミンスクの空港でFR4978便に搭乗していたKGBエージェントがラマン・プロタセビッチ氏を連行したと信じている」と述べた。ベラルーシの治安部隊はソビエト時代の名称をそのまま使用している。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官はジョー・バイデン大統領に事件を説明し、ジェイク・サリバン国家安全保障顧問がロシア安全保障会議の書記との電話会談でこの問題を提起したと述べた。「アメリカはNATO、EU、ヨーロッパの安全保障協力機構などと次のステップに向けて協議を進めています...」
ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ベラルーシ当局の「前例のない国家ハイジャック」を非難し、プロタセビッチ氏とガールフレンドのソフィア・サペガ氏を速やかに解放するよう要求した。
チェコのアンドレイ・バビシュ首相と欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「スキャンダラスな国家テロを非難する」と述べた。
EUの指導者たちはベラルーシに民主的な改革を奨励したうえで、ロシアの影響力を減らすために努力してきたが、調略はほとんど失敗している。一部のEU指導者はサミットに先立ち、ベラルーシの国営航空会社ベラビア社のEU圏内での飛行禁止などの厳しい制裁を示唆した。
ラトビアのエアバルティック社はEUの制裁を待たずにベラルーシの空域を回避すると発表した。リトアニア政府も5月25日からベラルーシへのフライトを全て停止するよう航空各社に指示すると述べた。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はベラルーシとの空路を断ち切るよう当局に命じた。
ルカシェンコ大統領は昨年8月の大統領選挙で圧倒的勝利を収めたと主張したが、西側諸国と野党はこの主張を却下した。その後、10万人規模の反ルカシェンコ抗議集会が首都ミンスクなどで連日開催されたが、KGBと警察はこれを厳しく取り締まり、非武装の民間人を警棒で激しく殴打し、踏みつけ、蹴り、逮捕し、拷問し、一部の指導者は起訴された。
KGBは昨年11月、プロタセビッチ氏をテロへの関与が疑われる犯罪者リストに加えた。ベラルーシはヨーロッパで唯一死刑制度を維持しており、テロは死刑に処される。
ロシアは昨年、リトアニアに亡命したベラルーシの野党指導者スヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏を「刑事告発」の指名手配リストに加えた。
ウラジミール・プーチン大統領はルカシェンコ大統領を支持しており、力づくで国家元首を追放するような事態が発生すれば、ベラルーシにロシア軍を派遣すると西側諸国に圧力をかけている。
ツィハノウスカヤ氏は24日の記者会見で、国連の国際民間航空機関(ICAO)に調査を開始するよう求めた。「ルカシェンコは戦闘機を使って飛行機をハイジャックし、ジャーナリストのプロタセビッチ氏を拘束しました。ベラルーシの領空に入った飛行機の安全は保障されません」