◎感染予防に熱心な州政府は封鎖と経済活動を何とか両立しようと試みてきたが、ジャイール・ボルソナロ大統領は州の政策をことごとく妨害している。
ブラジルの保健当局によると、国内の1日あたりの死亡者数は全世界の約4分の1を占めており、医療機関は危機的な状況にあるという。健康の専門家は、さらに大きな「災害」に発展する可能性があると警告した。
保健当局のまとめによると、ブラジルの過去7日間の平均死亡者数は2,400人を超え、数週間以内に3,000人に達する可能性があるという。AP通信の取材に応じた6人の専門家は、1日あたりの死亡者数はまもなく4,000人を超えると予想した。
壊滅的な事態を想定しているのは専門家だけではない。多くの州知事や市長も政府主導のロックダウンと感染予防対策の強化は避けられないと主張している。感染予防に熱心な州政府は封鎖と経済活動を何とか両立しようと試みてきたが、ジャイール・ボルソナロ大統領は州の政策をことごとく妨害してきた。
ボルソナロ大統領はコロナウイルス、マスク、社会的距離、ワクチンを嘲笑し、州のロックダウンを「破壊」と呼び、州指導者を「暴君」と非難している。
ブラジルではアマゾンの都市マナウスで発生したと考えられている変異種が従来型に置き換わり、猛威を振るっている。保健当局によると、25日の新規陽性者数は初めて100,000件を超え、集計が間に合わなかったという。
州知事や市長にコロナウイルス対策を助言しているミゲル・ニコレリス博士はAP通信の取材に対し、「ブラジルの累計死亡者数は7月までに50万人に達し、年末までにアメリカを超えると思います」と述べた。「私たちはかつて経験したことのないレベルの危機に直面してます。医療システムの崩壊は目の前に迫っています」
各州の医療関係者は感染者の急増に何とか対処しているが、27州中25州の集中治療室(ICU)の占有率は80%を超え、100%に達した州も出ている。ラテンアメリカ最大の病院複合施設、サンパウロ州のホスピタルダスクリニカスのホセ・アントニオ・キュリアティ博士はAP通信の取材に対し、「ベッドと治療室に空きはありません」と述べた。「患者を受け入れるスペースはどこにもありません。挿管に必要な鎮痛剤もまもなく在庫が切れます。(1日あたりの死者数)4,000人で収まると思ってはいけません」
ブラジルの国営科学技術研究所のフィオクルス財団(Fiocruz)は先日、新規感染者を40%削減するために14日間の完全封鎖を要求し、研究を主導する微生物学者のナタリア・パステルナック博士は、州が行った効果的な対策を国全体で行う必要があると指摘した。サンパウロ州の都市アララクアラは先月実施した封鎖で一定の成果を上げたと伝えられている。
パステルナック博士は報告の中で、「感染を抑えるためには、対策を打つ以外手はない」と警告した。「私たちは協調して行動しなければなりません。しかし、連邦政府は対策を追求することに関心を持っていないため、おそらく政府主導のロックダウンは実現しないでしょう」
「市長と州知事は独自の対策を実行しようとしています。これは最善のアプローチではありませんが、何もしないよりはマシです」
ブラジルで2番目に人口の多いミナスジェライス州は、必要不可欠な店舗(食料品店、薬局、ガソリンスタンドなど)以外に閉店を命じた。エスピリトサント州は3月28日に完全封鎖される。最大の都市、サンパウロ州とリオデジャネイロ州は、重要でない活動に広範な制限を課した。
しかし、ボルソナロ大統領は部分的な制限すら容認せず、州政府の努力を弱体化させる声明やツイートを発信し続けている。「州の指導者は市民の働く権利を奪い、ブラジル経済を暴行し、連邦政府の対策を否定しています。私は州政府の悲惨な対策に断固反対します」
リオのエドゥアルド・パエス前市長はロックダウン前に声明を発表し、「失業を引き起こしたい市長は一人もいない」と強調した。「州の対策は冗談ではありません。現実から目をそらさないでください。人々は死にかけています、対策を打たなければ、事態は悪化し続けます。この先コロナがどうなるかは誰にも分かりません。変異種はさらに力を増す可能性もあります」
パエス前市長が声明を発表した翌日、数百人のボルソナロ大統領支持者がリオ市内を行進した。一部の参加者はマスクを着用していたが、大多数は感染予防対策を無視し、大声で「働きたい!」「封鎖はいらない!」「州知事は辞任しろ!」と唱えた。
世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は3月22日の声明で、ブラジルの市民に感染予防対策の徹底と「真剣な対応」を呼びかけた。「政府と国民は団結して対応する必要があります。現在の上昇傾向を抑えるためには、すべての関係者の協調と努力が必要です。感染状況は本当に本当に本当に悪化しています。私たちは(毎週の)死亡率がわずか1か月で倍増したことを本当に心配しています」
感染力の強いブラジルのP.1変異種は国境を越えて世界中に広がっており、今週ニューヨーク州で初めて感染者が確認された。国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ博士はブラジルの保健当局者と24日にオンラインで会談し、ブラジルの感染状況に強い懸念を示した。