◎教皇は3月5日にイラクを訪れ、8日まで滞在する予定。イラク国内のコロナウイルスの感染状況は1月末頃から急速に悪化し、累計感染者は間もなく70万人を超える。
報道によると、感染症の専門家はフランシスコ教皇のイラク訪問に懸念を示しているという。
教皇は3月5日にイラクを訪れ、8日まで滞在する予定。イラク国内のコロナウイルスの感染状況は1月末頃から急速に悪化し、累計感染者は間もなく70万人を超える。
教皇はアブラハム発祥の地を訪問することでイスラム世界とバチカンをつなぎ、困窮するキリスト教徒が切実に必要としている精神的な後押しを提供したいと考えている。
しかし、感染症の専門家は、公衆衛生の観点で考えると、教皇のイラク訪問はおすすめできないと主張している。現地メディアの2月28日の報道によると、バチカンのイラク大使、ミチャ・レスコバール大司教はコロナ検査で陽性を確認したため、自国隔離に入ったという。
AP通信によると、レスコバール大司教の症状は軽度であり、教皇の訪問に向けた準備を続けているという。
イラクの医療システムは、戦争、経済危機、テロで深刻な被害を受けた。先日当局が公表した調査結果によると、現在国内で確認されている新規症例のほとんどがイギリスの変異種だという。
ハーバード大学医学部のダナファーバー癌研究所のナビッド・マダニ博士は、「教皇の訪問は良い考えではないと思います」と述べた。
イラン出身のマダニ博士は英医学雑誌のランセットにイラク国内のコロナに関する記事を共同執筆した。イラク、シリア、イエメンはイスラム過激派組織や反政府組織などの攻撃に苦しめられており、多くの人道支援を必要としている。
マダニ博士は電話インタビューの中で、「中東の人々はおもてなしを大切にしています。教皇が地域のためにバチカンから足を運ぶことは大いに歓迎されており、感染予防対策の喪失につながると思います」と警告した。
ナビッド・マダニ博士:
「教皇の訪問はコロナの超拡散につながる可能性があります。皆がマスクを着用していたとしても、数千、数万人が一カ所に集まれば、感染拡大のリスクを抑えることはできません」
英エクスター大学の感染症専門家、バーラト・パンカニア博士もこの考えに同意した。
一方、イラク政府当局者はAP通信の取材に対し、「政府はマスク着用の義務化、社会的距離の確保、群衆の制限を市民に課しています。また、入場者の増加に対処できる権限も持っています」と述べた。
バチカンも独自の感染予防策を講じている。教皇、20人の側近、そして教皇の飛行機に乗る70人以上のジャーナリストはワクチン接種を終えている。しかし、教皇のミサに出席し、スピーチを聞くイラク人はワクチンを接種していない。
パンカニア博士は、「私たちは世界的大流行の真っただ中にいます。政府は正しいメッセージを発信しなければなりません...教皇の訪問を歓迎する人々は、マスクを着用し、社会的距離を確実に確保してください」と述べた。
世界保健機関(WHO)は先日の記者会見の中で教皇のイラク訪問について質問を受け、「イラク政府は国内の感染状況を評価し、延期すべきかどうかを決定するべきだろう」と述べた。
教皇は入場制限もしくは無観客になったとしても、イラクで演説すると述べている。教皇はカトリックニュースサービスの中で、「イラクの人々は教皇がそこ(国内)にいることを望んでいます」と言った。
イラク政府は感染者の急増を受け、2月中旬に夜間外出禁止令を発効した。現在、学校やモスクは閉鎖され、レストランやカフェはテイクアウトのみ許可されている。
政府当局者はAP通信の取材に対し、「政府は国内の荒廃した経済および財務状況を考慮し、完全封鎖に反対した」と述べた。イラクではマスクの着用が定着しておらず、荒廃したエリアで生活する市民はマスクを入手すること自体困難と伝えられている。