◎金正恩「対外関係を包括的に拡大、発展させる朝鮮労働党の新たな政策の実行を宣言する。また、現在の状況と時代の変化を考慮し、韓国との関係改善の取り組みを模索する」
1月7日、北朝鮮の金正恩は1月5日に始まった大党大会(第8回朝鮮労働党大会)3日目の演説の中で、「対外関係を大幅に改善させる」と述べた。
国営メディアによると、金正恩は隣国韓国との関係改善を示唆したが、具体的な取り組みについては言及しなかったという。
北朝鮮の経済はコロナウイルス、自然災害、アメリカ主導の経済制裁で深刻な状況にあると伝えられている。韓国の当局者は、金正恩が5年ぶりの大党大会を利用して、ソウルおよびワシントンD.C.に和解のメッセージを発信するのではないかと期待していた。
金正恩は大会3日目の演説で、「対外関係を包括的に拡大、発展させる朝鮮労働党の新たな政策の実行を宣言する。また、現在の状況と時代の変化を考慮し、韓国との関係改善の取り組みを模索する」と述べた。
朝鮮労働党大会は北朝鮮の最高意思決定機関である。韓国の専門家は、「コロナウイルスがもたらした中国との国境封鎖、昨年夏の台風被害、アメリカ主導の厳しい経済制裁への対処などを話し合うのだろう」と述べた。
金正恩は初日の演説で、2016年に策定した経済開発計画の失敗を認め、会議の終盤に新5カ年計画を開始すると宣言した。
2日目の演説では、「軍事力を強化する」と述べた。
2011年に金正日(キム・ジョンイル)から権力を継承した金正恩は、1月8日に37歳の誕生日を迎えた。なお、金正日と初代党首の金日成(キム・イルソン)の誕生日は国民の祝日に指定されている。
国営メディアによると、朝鮮労働党は1月8日以降も大会を継続する予定だという。
金正恩は2017年9月の地下核実験強行後、突然ドナルド・トランプ大統領と仲良くなり、翌年6月12日に米朝首脳会談を開催した。
また、キムはその後も積極的な外交政策を取り入れ、中国の習近平 国家主席、ロシアのプーチン大統領、韓国の文在寅 大統領とも会談した。
しかし、2019年にトランプ大統領との友情が破綻し、さらにコロナウイルスの影響で国境を封鎖せざるを得なくなったことで、経済は低迷。キムは国内の経済危機を緩和させる取り組みに集中したと伝えられている。
金正恩は7日の大会の中で、北朝鮮社会に蔓延する非社会主義的要素を徹底的に排除し、社会システムの力を促進する新たな取り組みを提案した。
また、労働者団体が予定通り職務を遂行できなかったと叱責し、「イデオロギー教育を優先しなければならない」と怒りをあらわにしたという。
朝鮮労働党は西側がもたらす非社会主義的要素を「エイリアン」「不健全」などと呼び、厳しく取り締まっている。
韓国のアナリストによると、当局は「資本主義の要素が国内に流入することで内部統一が緩む」と警戒しているという。
またアナリストは、「金正恩は1月20日に就任するジョー・バイデン新大統領を警戒している」と述べた。
バイデン氏は金正恩を「凶悪犯」と呼び、完全なる非核化に向けた措置が講じられない限り、会談に応じることはないと伝えられている。
2019年、金正恩は「経済制裁の緩和を約束すれば核計画を部分的に縮小する」とトランプ大統領に迫ったが、交渉は即破綻した。
2019年の米朝首脳会談開催に手を差し伸べた韓国は、「金正恩は手ぶらでの帰国にひどく落胆した」と報じた。
拉致問題やミサイル発射実験に悩まされている日本政府も、北朝鮮の前向きなメッセージに期待している。