12月8日、エチオピア政府は、北部ティグライ地域の検問所を突破しようとした国連職員に発砲、拘束したと発表した。
政府高官のレッドワン・フセイン氏はAP通信の取材に対し、「国連職員が2つの検問所を破り、3つめの検問所を突破しようとした際に発砲した」と説明した。
レッドワン・フセイン氏:
「職員たちは許可されていない地域に向かおうとした。彼らは冒険間隔で遠征にふけっていた。何人かは拘束され、撃たれた者もいる」
国連はまだ声明を発表していない。
伝えられるところによると、国連のチームは銃撃が発生した12月6日にエリトリア難民のキャンプ場を訪問する予定だったという。
ティグライ地域では隣国エリトリアの難民、推定10万人が支援を受けている。
エチオピア政府とティグライ地域を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)の戦闘は11月4日から始まり、11月末に収束した。
紛争中、エリトリア軍が自国の難民をティグライ地域から連れ戻しているという情報が伝えられた。しかし、エリトリア政府は紛争への関与を否定している。
エチオピア政府は国連と協定を結び、ティグライ地域への人道支援を許可した。
ABCニュースによると、協定は「エチオピア政府の管理下にある地域にのみ」人道支援を許可するものだという。政府は難民キャンプ近くの町、シャイアに物資を乗せたトラック44台が到着したと述べた。
国連難民高等弁務官事務所のフィリッポ・グランディ長官は12月6日に、「難民やその他の困窮している人々に物資を届けることが重要だ」とツイートした。
ノルウェー難民評議会の長、ヤン・エグランド氏は声明で、「ティグライへの人道アクセスが依然として著しく制限されていることを深く懸念している」と語った。
EUの外交政策責任者、ジョセップ・ボレル氏は、「ティグライ地域への完全なアクセスを保証する必要がある」と懸念を表明した。
一方、エチオピアのアビィ・アハメド首相の報道官は声明で、「国連などと協力して、政府が主導する調整された枠組みの中で人道支援を拡大している」と述べた。
エチオピア軍は11月28日にティグライの州都メケレをTPLFから奪取したが、一部地域ではまだ戦闘が続いているという。
レッドワン氏は「投降を拒否した民兵やTPLFの部隊が活動している」と述べた。
ティグライについて知っておくべきこと
・2020年12月、国連とエチオピア、ティグライ地域への援助を許可する協定に署名。
・2020年12月1日、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、難民の栄養失調と飢餓を警告。
・2020年11月29日、赤十字病院、医療用物資が「危険なほど不足」していると警告。
・2020年11月28日、アビィ・アハメド首相、州都メケレを「完全に支配した」と宣言。
・2020年11月25日、政府軍、州都メケレへの攻撃を開始。
・2020年11月22日、国連、エチオピア政府軍によるティグライ地域への「最後通告」について、市民を巻き込む致命的な戦争犯罪につながると懸念を表明。
・2020年11月22日、アビィ・アハメド首相がティグレ人民解放戦線(TPLF)に降伏する機会を与える。
・2020年11月、国連のアントニオ・グテーレス事務総長、「即時の一時停戦」を求める。
・2020年11月、国連、「本格的な人道的危機」が発生していると警告。
・2020年11月14日、TPLFが、近隣地域の空港などをロケット弾で攻撃。
・2020年11月13日、国連はマイカドラの町で発生したと伝えられている大量殺戮について、事実であれば「戦争犯罪」の可能性もあると述べた。
・2020年11月、ティグライ地域、南西エリアに位置するマイカドラの町で、数百人が刺されるなどして死亡した。
・2020年11月4日、TPLFが政府軍の軍事キャンプを攻撃。TPLFは関与を否定している。
・2020年9月、アハメド政権はコロナウイルスへの対応として国内での選挙活動を禁じ、TPLFはこれに猛反発した。TPLFはこの制限を、「中央政権の独裁体制を強化する違法行為」と見なしている。
・国内最大の民族グループはオロモ民族。TPLFはこれに属する。
・オロモ民族グループとソマリア民族グループの衝突が長年続いてる。
・1970年代~1980年代、政府の崩壊、干ばつ、飢饉で100万人以上が死亡、約800万人が影響を受けたと伝えられている。指導者はマルクス主義の独裁者、メンギスツ・ハイレ・マリアム。
・1989年、TPLFは他の反政府組織と合併、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)を結成。
・1991年、EPRDFの軍事攻勢により、メンギスツ・ハイレ・マリアム政権崩壊。
・1991年7月、EPRDF、オロモ解放戦線(OLF)などが87名の国民議会を形成。エチオピア暫定政府(TGE)を設立。
・2018年4月2日、アビィ・アハメドが首相に就任。
・2018年7月、エチオピアとエリトリア国の首脳が20年ぶりに会談、和平協定に署名。
・2018年10月25日、サーレ・ワーク・ゼウデが大統領に就任。エチオピア初の女性大統領。
・2018年の避難民数は推定140万人。
・2019年、アハメド首相がノーベル平和賞を受賞。
・政府とTPLFの緊張関係は年々悪化している。
・TPLFはエリトリア国との和平を認めていない。
・オロモ民族グループによる虐殺(数十人規模)が横行。オロモに属するアハメド首相はこれを非難している。