24日、レバノンの検察当局は、シーア派イスラム原理主義組織ヒズボラの要人と伝えられているベイルート港の元税関職員などを起訴したと発表した。

8月4日に発生したベイルート港の爆発では、少なくとも200人が死亡し、数千人が負傷。住宅約20万戸が被害を受けた。

爆発の原因はベイルート港内の倉庫に保管された2,750トンの硝酸アンモニウムだった。

レバノンの国営通信社(NNA)によると、州検察官のガッサン・コーリー氏は、ベイルート港の税関職員、ハニ・ハジ・シェハデ氏とムッサ・ハジメ元税関長を起訴したという。

ふたりの起訴内容などの詳細情報は明らかにされていない。

伝えられるところによると、ベイルート港に2,750トンの硝酸アンモニウムが運び込まれた際、ハジメ元税関長はヒズボラの要人だったという。

2020年8月4日 AP通信/レバノン、首都ベイルート

ベイルート港の関係機関は、ヒズボラを含む支配的な政治派閥が地位と領地を分割する国内で最も腐敗した機関のひとつと見なされている。

NNAによると、シェハデ氏とハジメ元税関長が起訴されたことで、爆発に関連する被告人の数は33人に達し、そのうち25人が逮捕されているという。

なお、起訴内容、捜査状況などはいずれも不明。一切明らかにされていない。

地元メディアの調査報道記者、リヤド・コベス氏は2012年以来、ベイルート港と税関当局者の汚職を追跡している。

コベス氏は、国内の全ての政治派閥がベイルート港から後援の恩恵を受け、港での疑わしい取引を見逃してきたと指摘している。

また、多くの港湾関係者が2014年に持ち込まれた硝酸アンモニウムの危険性を認識し、その中心にいた人物が元ヒズボラの要人、ハジメ元税関長だったという。

NNAは今回起訴されたふたりについて、「爆発を調査しているファディ・ソーワン裁判官に照会された」と述べた。

爆発から3か月以上たった今も現地の復興作業は思うように進んでおらず、事件に関する情報はほとんど明かされていない。

ベイルート港で発生した爆発について

・硝酸アンモニウム2,750トンをベイルート港に運び込んだ貨物船は「Rhosus(ローサス号)」。

・ローサス号は1986年に築造された。

・ローサス号の元所有者はロシアの実業家、イゴール・グレシュキン氏。

・2013年7月、モザンピーク共和国に向け航行中だったローサス号は、セビリア港で安全対策の欠陥(計14カ所)を指摘される。積み荷は硝酸アンモニウム2,750トンだった。

・硝酸アンモニウムの供給会社は「Rustavi Azot LLC」。顧客はモザンピーク共和国の国際銀行。当行によると、商業用爆薬を製造する国内の企業に代わり、硝酸アンモニウムを購入したという。

・2014年2月、ローサス号がベイルート港に入港。この時、ローサス号は約100,000ドルの未払い請求を抱えており、ベイルートの港湾当局に「差し押さえられた」。

・2014年6月頃、乗組員たちは、ローサス号の船内に危険物質が積まれていることを港湾当局者や関係者に警告していた。

・2014年9月、ベイルートに足止めされていた船長と乗組員、帰国。

・港湾当局は司法に複数回書簡を送り、硝酸アンモニウムの再輸出または販売の許可を求めていたと主張。しかし、地元メディアの調査報道記者、リヤド・コベス氏は司法に提出した書簡に問題があったと指摘。裁判所は間違いを何度も指摘し、さらなる情報を求めていたという。

・2020年8月4日、爆発発生。

・200人以上が死亡、数千人が負傷、推定30万人が住居を失いホームレスになった。

・国連の調査によると、爆発で住宅約20万戸、その他の建物約4万戸が被害を受け、そのうち3,000戸は立ち入りできないほど深刻なダメージを負ったという。

硝酸アンモニウムの特性

・農業肥料の一種として使用される一般的な工業薬品。

・鉱業で使用する爆発物の主要成分。

・それ自体に爆発性はないが、特異な状況下に置かれることで爆発する。

・爆発すると窒素酸化物やアンモニアガスなどの有毒ガスを放出する可能性がある。

・厳格なルールを守り、安全に保管しなければならない。

・保管場所は完全耐火性。爆発を引き起こす可能性のある火源、ガス管などは設置できない。

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