オーストリアの警察当局は、11月2日にウィーンの中心街で発生したテロ攻撃に関わったとされる14人を逮捕したと発表した。
テロ攻撃の実行犯は、昨年12月に刑務所を出所した20歳のイスラム教徒でイスラム国(IS)を信奉するジハード主義者。男は通りすがりの人々を銃撃した後、警察官に射殺された。
首都ウィーンでは警察がさらなる容疑者の捜索を開始、セキュリティが強化され重苦しい空気に包まれている。
警察当局によると、射殺された容疑者は単独犯の可能性が高いという。
セバスチャン・クルツ首相は声明で、「死亡した4人は年配の女性と男性、若い男性、ウェイトレス、負傷者は22人」と述べた。
セバスチャン・クルツ首相:
「攻撃は私たちの生き方、民主主義への憎しみが引き起こしたものだった」
ドイツ外相によると、死亡した女性のひとりはドイツ人だったという。
オーストリアのカール・ネハマー内務大臣は、別の容疑者が関与した兆候はないと述べつつ、可能性を排除しなかった。
カール・ネハマー内務大臣:
「彼らは私たちの社会を暴力と恐怖で分断できると考えている。一緒に立ち上がることが重要だ」
イスラム国はオンライン宣伝チャンネルの動画で証拠を提供することなく、攻撃の背後にいると主張した。
テロ攻撃は2日20:00から始まり、20:09に容疑者が射殺されるまで続いた。
警察当局は計6カ所を攻撃現場と特定した。
3日、ウィーンの各地で半旗が掲げられ、通学した子供たちも1分間の黙とうを捧げた。
地元メディアによると、トルコ系の男性2人が容疑者の銃撃で負傷した警察官を救出したという。
負傷した警察官を救出したミカイル・オーゼン氏は地元メディアの取材に対し、「私たちは彼の肩をとり、他の警察官のもとに移送した」と述べた。
警察当局によると、ウィーン、ザンクト・ペルテン、リンツで容疑者と関係のある14人を逮捕したという。その中には、18歳と24歳のスイス市民も含まれていた。
容疑者
ネハマー内務大臣は容疑者について、次のように述べた。
・容疑者はカジティム・フェジザライ(KujtimFejzulai)、北マケドニア共和国出身、20歳。
・ISジハード主義者に加わる目的でシリアに渡航しようとし、逮捕された。
・2019年4月に懲役22カ月の判決を受け、投獄。
・ISへの信奉は捨てた、と認められたため、2019年12月初旬に恩赦を受け釈放。
容疑者はオーストリアと北マケドニアの市民権を持っていた。
ネハマー内務大臣は容疑者がソーシャルメディアに投稿した写真を公開。「容疑者は武器を保持していると示していた」と述べた。
警察当局は容疑者の武器について、カラシニコフ・アサルトライフル、マチェーテ、ピストルを保持していたとコメントした。
ヨーロッパで繰り返されるテロ攻撃
フランスも単独犯と思われるジハード主義者の攻撃に苦しめられている。
先月、パリ郊外の学校に勤務する歴史教師のサミュエル・パティ氏が、チェチェン人のイスラム教徒に首を切られ死亡。容疑者は射殺された。
さらに先月末、イスラム教徒がニースのノートルダム大聖堂で3人を刺殺。マクロン大統領は攻撃について、「イスラム教徒のテロ攻撃で3人が死亡した。相手は私たちの価値観に理解を示さない。私たちは何も明け渡さない」と厳しい対応を示唆した。
近年、ヨーロッパで最も大きな被害を出したISの攻撃は、パリで130人が殺害された2015年11月の事件である。
ヨーロッパで発生したイスラム教徒によるテロ攻撃のタイムライン
2020年11月オーストリア:
イスラム教徒がウィーンの繁華街で4人を銃殺、負傷者22人。
2020年10月フランス:
イスラム教徒がニースのノートルダム大聖堂で3人を刺殺。
2020年10月フランス:
教師のサミュエル・パティ氏がイスラム教徒に殺害される。
2020年9月フランス:
2015年にイスラム過激派がテロを起こしたシャルリー・エブド(パリ)の旧事務所近くで2人が刺され、重傷を負う。
2019年10月フランス:
警察のコンピューターオペレータ、ミキャエル・ハーポンが、パリの警察本部で警官3人と民間人1人を刺殺。犯行後、射殺された。
2017年8月スペイン:
バルセロナとカタルーニャ沿岸の町、カンブリスルで同時銃撃テロが発生。死者16人、負傷者130人以上。
2017年5月イギリス:
ロンドン中心部、銃撃とナイフによる攻撃で8人が死亡、負傷者多数。
2017年5月イギリス:
マンチェスターで開催されたコンサートで自爆テロが発生、死者22人。
2016年7月フランス:
容疑者2人が北部ルーアン郊外の教会を襲撃。ジャック・アメル司祭を殺害し、人質に重傷を負わせた。
2016年7月フランス:
ニース、バスティーユ・デイを祝う群衆に大型トラックが突入し、86人が死亡。攻撃後、イスラム国(IS)が犯行声明を発表した。
2015年11月フランス:
複数の自爆テロ犯がパリのバタクランコンサートホールを襲撃。死者130人、負傷者数百人。攻撃後、イスラム国(IS)が犯行声明を発表した。
2015年1月フランス:
2人のイスラム過激派武装勢力がシャルリー・エブドの事務所に押し入り、12人を射殺。