◎バイデン氏は今後、ヨルダン、レバノン、イラク、イスラエルを含むシリアの近隣諸国への支援を優先するとした。
米国のバイデン(Joe Biden)大統領は8日、シリアのアサド政権が崩壊したことを歓迎し、平和的に権力が移譲されることを期待すると表明した。
バイデン氏は今回の事態について、「イスラエルのガザ紛争とレバノンのヒズボラとの戦いに対する米国の支援、そしてシリアの緊密な同盟国であるイランを弱体化させたシリアとイラクの民兵グループへの支援によるところが大きい」という見方を示した。
またバイデン氏はロシアの侵攻に対抗するウクライナへの軍事支援にも言及。「その結果、ロシアはアサドに支援を送る余裕がなくなった」と述べた。
バイデン氏は今後、ヨルダン、レバノン、イラク、イスラエルを含むシリアの近隣諸国への支援を優先するとした。
さらに、「米軍はシリア北東部に留まり、イスラム(ISIS)に対抗するクルド当局への支援を継続する」とした。
米国は何年にも渡ってクルド人自治区の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」に支援を提供している。SDFは米政府の支援を受け、シリアにおけるISISとの戦いで主導的な役割を果たしてきた。
シリア北東部には現在、約900人の米兵が駐留している。
バイデン氏は「警戒を怠らない」と強調。「すべてのシリア当局」との関与を約束した。
またバイデン氏は「アサド政権を倒した反体制派グループには、テロリズムの悲惨な記録がある」と述べた。
タハリール・アルシャーム機構(HTS)とその同盟組織は先月末、アサド政権の支配下にある北部アレッポ県に攻め込み、全土を制圧。正規軍への攻撃を本格化させた。
HTSはその後、中部の要衝ハマに侵攻。第3の都市ホムスもあっさり制圧した。
HTSは7日、首都ダマスカスを制圧し、アサド政権の終焉と「復讐のない新時代」の始まりを宣言。さらにHTS司令部は8日、アサド氏が国を去ったと発表。「独裁政権から解放された」と宣言した。
反体制派が電光石火の進撃を開始してから2週間も経たぬうちにアサド政権は崩壊した。
HTSは「国際テロ組織アルカイダ」のシリア支部とみなされているが、現在はアルカイダとのつながりを断ったと主張している。