◎中央銀行爆破を含むミレイ氏の熱烈な提案は変化を切望する有権者の心に響いたようだ。
アルゼンチンで19日、大統領選決選投票の開票作業が進み、極右の無政府資本主義者ミレイ(Javier Milei)氏の勝利が確実な情勢となった。
選挙管理委員会によると、開票率86.6%の時点でミレイ氏の得票率は55.95%、マサ(Sergio Massa)経産相は44.04%となっている。
マサ氏は19日遅くに敗北を認めた。
地元メディアによると、マサ氏は電話でミレイ氏に祝意を伝えたという。
アルゼンチンは未曽有のインフレに悩まされており、多くの有権者が左派のフェルナンデス政権の交代を求めていた。
トランプ(Donald Trump)前米大統領を敬愛し、チェーンソーを振り回すパフォーマンスで有名になったミレイ氏は公的支出を削減し、政府庁舎の数を半減させ、中央銀行を爆破解体し、自国通貨を米ドルに置き換えると宣言している。
ミレイ氏はテレビ番組の中で「政治カースト」と呼ばれる有権者の怒りを代弁して暴言を吐き散らし、140%超のインフレに苦しむ低中所得者層の支持を得た。
またミレイ氏は自身を国内外で活動する邪悪な社会主義勢力に対抗する「十字軍の頭領」と位置付けている。
中央銀行爆破を含むミレイ氏の熱烈な提案は変化を切望する有権者の心に響いたようだ。
選管は来週中に最終結果を公表する予定だ。SMSには「チェーンソーマンが勝った」「俺たちのミレイ」「ミニトランプ誕生」などといった投稿が寄せられている。
ミレイ氏はトランプ氏やブラジルのボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領に近い政策を推進するものとみられるが、政治経験ゼロであり、全てが未知数だ。
左派政権にウンザリした有権者は「強いアルゼンチン」「アルゼンチン・ファースト」というミレイ氏の言葉に魅せられた。
米ドルを公式通貨にするというミレイ氏の発言は支持者から喝采を浴びた。しかし、欧米のエコノミストはいつ財政破綻してもおかしくないと警告している。
インフレ率140%超、国民の4割が貧困にあえぐアルゼンチンは左から右に大きく傾くとみられる。国連によると、同国の児童の50%以上がまともな食事をとれず、援助団体やNGOの支援に頼っている。
国際通貨基金(IMF)は現在、フェルナンデス(Alberto Fernández)大統領の前任であるマクリ(Mauricio Macri)前大統領が積み重ねた債務440億ドルを再編するための協議を続けている。