◎ロシア軍は戦争を有利に進めるためにエネルギーインフラを攻撃し、ウクライナの士気を下げようとしている。
ウクライナのゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領は23日、国連安保理の緊急会合でオンライン演説し、ロシア軍による送電網への攻撃は「人道に対する罪」にあたると糾弾した。
この緊急会合はウクライナ大使の要請で招集された。
ゼレンスキー氏はロシア軍の攻撃により、数百万人が氷点下の中で暖房や水なしで過ごすことを余儀なくされていると指摘した。
ウクライナ大統領府によると、ロシア軍は首都キーウを含む複数の地域のエネルギーインフラにミサイルを撃ち込み、民間人少なくとも6人が死亡したという。隣国モルドバでも停電が発生した。
ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトム社は23日、この攻撃で3つの原発が外部の送電網から切り離れたと報告。放射線レベルに変化はないとした。
欧州最大のザポリージャ原発も外部電源を失い、核燃料と使用済み核燃料を冷やすためにディーゼル発電に切り替えた。同原発の原子炉6基はすべて停止している。
国際原子力機関(IAEA)はザポリージャ原発への攻撃が相次いでいることに深刻な懸念を示し、同原発とその周辺を非武装地帯にするよう繰り返し要請している。
モルドバ政府も23日に大規模停電を報告したが、直接の被害はなかった。
ロシア軍は戦争を有利に進めるためにエネルギーインフラを攻撃し、ウクライナの士気を下げようとしている。
ゼレンスキー氏によると、発電所へのミサイル攻撃は巨大な被害をもたらし、同国の送電網の半分以上が運用できない状態だという。
ゼレンスキー氏は23日に公開した動画で「キーウの状況は非常に厳しく、電力を復旧させる取り組みが24時間体制で続いている」と報告した。
キーウのクリチコ(Vitali Klitschko)市長もテレグラムに声明を投稿。停電と断水の影響を受ける市民は人口の80%に達したと警告した。
当局によると、西部リビウ、南部オデーサ、中部チェルカシュなどの電力は復旧したという。
米国のトーマスグリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連大使は緊急会合で、「ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領は寒さを利用してウクライナに甚大な被害を与えようとしている」と非難した。
またトーマスグリーンフィールド氏はロシア軍が撤退を強いられていることに言及し、「敗走したロシア軍は子供や女性を罰する臆病で非人道的な戦略を採用している」と糾弾した。
南部ザポリージャ州のウクライナ支配地域ではロシア軍のミサイルが産科を直撃し、新生児が死亡した。
ウクライナ軍司令部によると、ロシア軍が発射した巡行ミサイル67発のうち51発を防空ミサイルで撃墜したという。また同司令部は、攻撃用ドローンが再び使用されたと報告した。
ウクライナ政府は数週間にわたる大規模攻撃により、国内の火力・水力発電の大半が停止したと報告している。
ロシア大統領府のペスコフ(Dmitry Peskov)報道官は訪問先のアルバニアで声明を出したが、この空爆には言及しなかった。
西側のシンクタンクはインフラ攻撃について、「ロシアはウクライナを弱らせ、交渉で有利な条件を引き出したいと考えている」と指摘している。
ゼレンスキー氏はロシアを除く安保理14カ国にさらなる努力を呼びかけた。
フランスのマクロン(Emmanuel Macron)大統領はインフラへの攻撃を「戦争犯罪」と呼び、米国も同様のコメントを発表した。
一方、欧州議会はウクライナへの攻撃を理由にロシアを「テロ支援国家」に認定した。
報道によると、欧州議会は決議採択直後にサイバー攻撃を受けウェブサイトがダウンしたという。当局はこれを「親ロシアのハッカーによる妨害攻撃」と呼んだ。