◎イエメン内戦は近代史上最悪と呼ばれる人道危機を引き起こし、この8年で少なくとも16万人が死亡。子供を含む1000万~2000万人が飢餓に直面している。
国連は2日、イエメン内戦の当事者が休戦協定の延長に合意せず、戦闘が再燃する可能性があると警告した。
グルンドバーグ(Hans Grundberg)国連イエメン担当特使は声明で、「休戦協定の期限である10月2日を過ぎた後も協議は続いている」とし、戦争当事者に挑発行為を控えるよう呼びかけた。
協定は4月2日に発効し、6月2日に延長され、8月2日の2度目の延長が決まった。
イエメン内戦は近代史上最悪と呼ばれる人道危機を引き起こし、この8年で少なくとも16万人が死亡。子供を含む1000万~2000万人が飢餓に直面している。
サウジ主導の連合軍はシーア派武装勢力「フーシ」の拠点を攻めつつ首都サヌアなどにミサイルを撃ちこみ、インフラを破壊し尽くした。しかし、絶え間ない空爆と地上戦にもかかわらず戦闘は膠着状態に陥り、人道危機を引き起こしたのである。
グルンドバーグ氏は声明の中で、「合意に至らなかったことを遺憾に思う」と述べた。
フーシ派は国連の提案に同意しなかったが、グルンドバーグ氏はそれには触れず、延長交渉に積極的に関与したイエメン政府に謝意を示した。
またグルンドバーグ氏は政府に対して、「合意形成に向けた努力の継続」を求めた。
一方、外務省報道官は2日、フーシ派が問題を複雑にしたと非難した。
アラブ向けテレビ放送アルハダスは報道官の話を引用し、「フーシ派は交渉と休戦協定の履行を妨害した」と報じている。
また報道官は、「政府は休戦を維持するための妥協案を提示し、譲歩した」と説明した。
現地メディアによると、フーシ派は声明を発表していない。
しかし、フーシ派の報道官は1日、首都サヌアの国際空港の全線運航再開と、ホデイダの港の封鎖が解除されない限り、協議には応じられないと主張した。
イランの軍事支援を受けるフーシ派は先月、首都サヌアで大規模な軍事パレードを行い、大型兵器やミサイルを披露。国連オブザーバーを怒らせている。
フーシ派の報道官は国内で活動している民間の石油会社に対し、「立ち退かなければ施設を押収する」と警告した。「化石燃料はすべてイエメン国民のものであり、その利益は公務員の給与に充てられます...」
4月の合意でサヌア空港とホデイダ港の一部開港が決まり、ヨルダンやエジプトへのフライトが再開された。政府は第3の都市タイズに対するフーシ派の封鎖も解除するよう求めた。
しかし、その後の協議は完全に行き詰まり、ほとんど進展はみられない。もうひとつの難問は公務員の給与をどに賄うかだ。多くの公務員が何年も無給で働いている。
国際NGOオックスファムのイエメン担当ディレクターは2日、「協定が破綻すれば、空爆、砲撃、ミサイル攻撃で数百万人の命が危険にさらされる」と警告した。
この問題に詳しい専門家によると、フーシ派は内戦の過程で戦力を増強したものの、派閥間の争いを抑えることに失敗し分裂しかけており、今後の協議が進展するかどうかは不透明だという。
ブリュッセルに本部を置くシンクタンク「国際危機グループ」は、「フーシ派は交渉の中で自分たちの方が有利、自分たちの方がより大きな影響力を持っているかのように振る舞ってきた」と指摘している。
フーシ派は近年、巡航ミサイルや無人機などサウジ同盟国に大打撃を与えかねない強力な兵器を配備している。イランはフーシ派に多くの兵器を供与していると西側から非難されている。
一方、南部の州では反フーシ派連合に亀裂が生じている。
今年8月にはUAEの支援を受ける「シャブワ防衛軍」が、同じくUAEの支援を受ける「巨人旅団」から南部の油田・ガス田を奪還したと報告している。この内紛では数十人が死亡したと伝えられている。