◎エチオピア政府はティグライ州を完全封鎖しているため、現地の状況を正確に把握することは困難である。
報道によると、エチオピア北部ティグライ州で今週初めに空爆が確認され、民間人少なくとも5人が死亡したという。
AP通信はNGOの報告を引用し、「27日にティグライ州北西部の町が空爆を受け、民間人少なくとも5人が死亡、16人が負傷した」と報じている。
AFP通信によると、ティグライ州の州都メケレと第二の都市シャイアに拠点を置く人道支援機関も空爆を確認したという。
ティグライ州を実行支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)と軍の戦闘は2020年11月に本格化し、これまでに民間人数万人が死亡、数百万人が国内避難民となり、数万人が近隣諸国に逃亡したと推定されている。
軍とTPLFの戦闘は8月末に再開され、5カ月間維持された人道的停戦は破綻した。
TPLFは今月、アフリカ連合(AU)仲介の和平交渉に応じる意思があると表明したが、エチオピア軍は隣国エリトリアの部隊と協調してティグライ州に攻撃を仕掛けているとみられる。
エチオピア政府は30日、公式ツイッターアカウントに声明を投稿。「TPLFが住宅地に兵器を隠している」と指摘し、空軍の攻撃で兵器庫と軍事機器を破壊したと報告した。
一方、TPLFは29日の声明で、「エリトリア軍が北西部の町を破壊し、多くの民間人を殺害した」と説明した。エリトリア軍はこの内戦に関与しているとみられるが、西側の批判を無視し続けている。
エチオピア政府はティグライ州を完全封鎖しているため、現地の状況を正確に把握することは困難である。
米宇宙技術会社マクサー・テクノロジーズが今週公開した衛星画像には、ティグライ州の国境付近に配備されたエリトリア軍とみられる兵士の姿が映っていた。
この内戦は壊滅的な人道危機を引き起こしており、国連の推計によると、民間人数万人が死亡、数百万人が避難生活を余儀なくされ、数十万人が飢餓状態に追い込まれ、いつ大飢饉が発生してもおかしくない。
ティグライ州の人口は500万人超と推定され、その大半が人道支援を必要としているものの、州境は完全封鎖されているため、人道機関は物資を輸送できずにいる。
世界食糧計画(WFP)の東アフリカ事務所は29日、「戦争を終結させる必要がある」と訴え、8月24日以降、ティグライ州に一切出入りできていないと明らかにした。
WFPは同州の市民の89%が限られた食料に頼り、40%以上が深刻な食料不足に陥っていると警告した。
ティグライ州を含むエチオピア北部では数十年に一度の干ばつが進行中であり、国連は大飢饉が発生する可能性があると警告している。
干ばつはエチオピアだけでなくケニアとソマリアの広い範囲でも続き、数千万人が人道支援を求めている。