◎最高人民会議が採択した法令は先制核攻撃を行う条件も明文化している。
2022年9月8日/北朝鮮、首都平壌で開催された最高人民会議、金正恩 党総書記(Korean Central News Agency/Korea News Service)

北朝鮮の国営メディアは9日、最高人民会議が核兵器の使用に関する法令を全会一致で採択したと報じた。

これで北朝鮮は核兵器保有国であると公式に宣言したことになった。

朝鮮中央通信社KCNAによると、金正恩(Kim Jong Un)党総書記はこの法令を「不可逆的」と評し、米国との非核化交渉の可能性を排除したという。

法令は先制核攻撃を行う条件も明文化している。

世界で最も貧しい北朝鮮は米国主導の経済制裁で疲弊しているにもかかわず、核・ミサイル開発を加速させ、この20年で6回核実験を行った。

キムは国連安保理の決議を却下し、軍事力強化を推進し、近隣諸国を脅かし、米国本土を攻撃できる長距離弾道ミサイル(ICBM)を開発したと信じられている。

キムは3年前、トランプ(Donald Trump)前米大統領と首脳会談を行ったが、非核化交渉は頓挫し、兵器開発にかじを切った。

バイデン(Joe Biden)米大統領は北朝鮮との対話に応じる姿勢をみせているが、核兵器を廃棄すると約束しない限り、制裁解除に向けた交渉には応じないとしている。

米国は北でコロナが大流行した際、支援を申し出たが、キムはこれを無視し、中国に支援を求めたとみられる。

米国は昨年、北朝鮮政策を見直し、朝鮮半島の「完全な非核化」が目標であると改めて表明した。

バイデン氏は「外交と抑止力」の組み合わせでそれを追求するとしたが、キムは米国との対決に備える必要があるとし、交渉再開の糸口すら見出せない状況が続いている。

キムは今年、弾道ミサイルを日本海に乱発し、地域の緊張を劇的に高めた。

米韓はこれに対抗するため、ここ数年で最大規模の合同軍事演習を行っている。

<法令の概要>
▽核戦力は国の主権と領土、人民の生命と安全を外部の軍事的脅威と侵略、攻撃から守る国防の主要戦力となる。

▽核戦力は敵対勢力に朝鮮民主主義人民共和国との軍事的対決が破滅をもたらすことを明確に理解させ、侵略と攻撃の企てを断念させることによって戦争を抑止することを主要任務とする。(核抑止力)

▽核戦力は抑止が失敗した場合、敵対勢力の侵略と攻撃を撃退し、戦争に決定的な勝利を収めるための作戦任務を遂行するものとする。

▽核戦力は各種の核弾頭、運搬手段、指揮統制システムおよびその運用と更新のためのすべての人員、設備、施設によって構成される。

▽最高人民会議の国務院長は核兵器に関するすべての決定権を有する。

▽敵対勢力の攻撃を受けて国家核戦力の指揮統制体制が危険にさらされた場合、あらかじめ決定された作戦計画に基づき、挑発と指揮の起点を含む敵対勢力を撃滅するために自動的かつ直ちに核攻撃を開始するものとする。

▽核戦力は使用の命令後、直ちに使用する。

▽朝鮮民主主義人民共和国は国家と人民の安全を著しく脅かす外部からの侵略と攻撃に対処するため、核兵器を最後の手段として使用することを大原則とする。

▽朝鮮民主主義人民共和国は非核兵器国が他の核兵器国と結託して朝鮮民主主義人民共和国に対する侵略と攻撃に加担しない限り、核兵器による威嚇や核兵器の使用を行わない。

▽朝鮮民主主義人民共和国は次のような場合に核兵器を使用することができる。

1.核兵器またはその他の大量破壊兵器による攻撃が開始されたと判断される場合。

2.敵対勢力による国家指導部および核戦力の指揮機関に対する核または非核攻撃が行われた、または行われそうになったと判断される場合。

3.国家の重要な戦略目標に対する致命的な軍事攻撃が行われた、または間近に迫っていると判断される場合。

4.戦争の拡大・長期化を防止し、有事における戦争の主導権を握るための作戦の必要性が不可避的に生じた場合。

5.その他、国家の存亡と国民の安全に対する壊滅的危機に、核兵器のみによって対応せざるを得ない状況が生じた場合。

2022年9月8日/北朝鮮、首都平壌で開催された最高人民会議(Korean Central News Agency/Korea News Service)
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